キツネザル科

キツネザル科：マダガスカルの多様な霊長類

キツネザル科(Lemuridae)は、霊長目に属する動物群です。その名の通り、キツネのような顔つきが特徴的で、マダガスカル島とその周辺の島嶼部を主な生息地としています。いくつかの種は人間の手によってコモロ諸島などに移入されたと考えられています。

形態

キツネザル科の動物は、種類によって大きさや毛色などにバリエーションが見られますが、共通の形態学的特徴を有しています。歯式は門歯4/4、犬歯2/2、小臼歯6/6、大臼歯6/6と、他の霊長類とは異なる独特の歯列を持ちます。この歯式は、彼らが主に植物を食べる食性と関連していると考えられています。

分類

キツネザル科の分類は、歴史的にいくつかの見直しが行われてきました。1977年には、歯列や染色体の分析に基づき、イタチキツネザル科がキツネザル科から分割されるという説が提唱されました。その後、2003年には、分類の混乱を解消するため、イタチキツネザル科をキツネザル科に含めるという意見も出されました。しかし、現在では亜科を設けずに、下記に示す属と種のみでキツネザル科を構成するという分類が広く受け入れられています。本記事では、相見・小山 (2006) の分類に従って記述します。

キツネザル科の種類

キツネザル科には、様々な種が含まれ、それぞれ独自の形態や生態を持っています。代表的な属と種を以下に示します。

*チャイロキツネザル属 ( Eulemur)

シロビタイキツネザル (Eulemur albifrons): 白っぽい額が特徴です。
ハイイロキツネザル (Eulemur cinereiceps): 灰色の頭部が特徴です。
アカエリキツネザル (Eulemur collaris): 赤い襟のような模様があります。
カンムリキツネザル (Eulemur coronatus): 頭部に冠のような模様があります。
ブラウンキツネザル (Eulemur fulvus): 茶色い体毛が特徴です。
クロキツネザル (Eulemur macaco): 黒い体毛が特徴です。
マングースキツネザル (Eulemur mongoz): マングースのような体つきです。
アカハラキツネザル (Eulemur rubriventer): 赤い腹部が特徴です。
アカビタイキツネザル (Eulemur rufus): 赤い額が特徴です。
サンフォードキツネザル (Eulemur sanfordi): サンフォードという人物にちなんで名付けられました。

ジェントルキツネザル属 (Hapalemur)

アラオラジェントルキツネザル (Hapalemur alaotrensis): アラオ湖周辺に生息します。
キンイロジェントルキツネザル (Hapalemur aureus): 金色がかった毛色をしています。
ハイイロジェントルキツネザル (Hapalemur griseus): 灰色の毛色をしています。
ミナミジェントルキツネザル (Hapalemur meridionalis): マダガスカル南部に生息します。
サンビラノジェントルキツネザル (Hapalemur occidentalis): サンビラノ地域に生息します。

*ワオキツネザル属 (Lemur)

ワオキツネザル (Lemur catta): 輪状の尾が特徴的な、最もよく知られたキツネザルの種です。

*オオジェントルキツネザル属 (Prolemur)

ヒロバナジェントルキツネザル (Prolemur simus): 大きな花のような鼻が特徴です。

*エリマキキツネザル属 (Varecia)

アカエリマキキツネザル (Varecia rubra): 赤いエリマキが特徴です。
クロシロエリマキキツネザル (Varecia variegata): 黒と白のエリマキが特徴です。

生態と保全

キツネザル科の動物は、マダガスカル島の多様な環境に適応して生活しています。食性は主に植物ですが、種によって果実、葉、花、樹液などを食べるなど、食性の違いが見られます。また、多くの種が樹上生活者であり、枝から枝へと敏捷に移動します。しかしながら、近年、マダガスカル島の森林破壊や密猟などによって、多くのキツネザルが絶滅の危機に瀕しています。これらの貴重な霊長類の保全のためには、生息地の保護や密猟対策の強化などが不可欠です。

参考文献

伊谷純一郎監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科3 霊長類』、平凡社、1986年、20-26、30-31頁。

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