キムナイヌ

キムナイヌとは

キムナイヌは、アイヌに伝わる妖怪で、その名は「山にいる人」という意味を持っています。また、キムンアイヌとも呼ばれ、別名にはキムンクッ（山にいる神）、キモカイクッ（山においでになる神）、オケン（つるっぱげ）などがあります。特に大雪山周辺での伝説が広まり、北海道の山々に住むとされているこの神秘的な存在は、自然と密接に関わっています。

伝説と行動

北海道の大雪山には、キムナイヌが棲むと言われる場所があります。そこでは、キムナイヌの存在を恐れ、泊まることを避けるよう伝承されています。この妖怪は非常に素早く、また力も強いため、動物や人間を容易に捕まえることができるとされています。特に言い伝えによれば、クマやその他の野生動物も追いかけて捕まえてしまう能力を持っています。

ただし、キムナイヌに襲われることを避けるための方法もあります。タバコに火をつけて差し出すことによって、キムナイヌは人間を傷つけることなく、静かに寄ってくることがルールとされています。実際、山の中でタバコを吸うことで、この妖怪との関係が築けるとも言われています。タバコを少し取り分け、「山の神さんにあげます」と伝えれば、害を与えられることはないとのことです。

樺太の伝説

また、樺太地方ではキムナイヌをロンコロオヤシ（禿げ頭のお化け）と呼称することがあります。山中で荷物が重くて苦しんでいるとき、アイヌの人々は「アネシラッキ ウタラ イカスウ ワ」（守り神さんたち、手伝っておくれ）と叫ぶことで、この存在が現れ、荷物を軽くしてくれるという伝説があります。不过、注意が必要で、禿げ頭の存在を口にすると、たちまち山が荒れ、急に雨が降り出したり、高い木が倒れてくることが伝えられています。

自然の脅威

また、自然現象もキムナイヌに結びつけられています。無風の状態にもかかわらず、大木が突然倒れる現象は、この妖怪の仕業とされていることが多いです。このような状況に直面した場合は、「キムン ポネカシ ヤイカ ニー オツイ ナー」（山の小父さん、お前さんの上に木が倒れていくよ）と唱えることで、キムナイヌが退散すると信じられています。

人間とキムナイヌの関係

キムナイヌは人間の血を強く嫌うとも言われていますが、それにもかかわらず、キムナイヌが人を殺したという伝説や物語も数多く存在します。これは、この妖怪が持つ恐怖の側面と、タバコを介した共存の側面を強調するものと言えるでしょう。

このように、キムナイヌにまつわる伝説や習慣は、アイヌの人々の文化と自然への理解を反映しており、今もなお語り継がれています。

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