キャサリン・オブ・ブラガンザ

キャサリン・オブ・ブラガンザ：波乱の王妃とイギリスへの貢献

キャサリン・オブ・ブラガンザ（1638年-1705年）は、ポルトガルの王女として生まれ、イングランド王チャールズ2世と結婚したことで知られる王妃です。彼女の生涯は、ポルトガル独立戦争、イングランド王室との複雑な関係、そしてイギリス社会への影響など、多くのドラマチックな出来事に彩られています。

ポルトガル独立と政略結婚

1638年、リスボンで生まれたキャサリンは、ポルトガル国王ジョアン4世とルイサ・フランシスカ・デ・グスマンの娘でした。彼女の父ジョアン4世は、スペインからのポルトガル独立を宣言し、ブラガンサ朝を開いた人物です。独立後もスペインとの戦争が続いたため、ポルトガルは同盟国を必要としていました。そこで、ジョアン4世は娘カタリナをチャールズ2世に嫁がせることで、イングランドとの同盟関係を築こうとしました。この計画は、キャサリンの幼少期から進められており、1640年には婚約が成立していましたが、イングランド内戦の影響で結婚は遅れました。最終的に、1662年、王政復古後のイングランドで、二人は結婚することとなります。この結婚の持参金には、タンジールとボンベイ（現在のムンバイ）が含まれており、後のイギリス帝国の拡大に重要な役割を果たすことになります。莫大な持参金は、イングランドの財政問題解決にも貢献しました。

カトリック信仰と戴冠拒否

キャサリンは熱心なカトリック教徒でした。そのため、イングランド国教会の儀式による戴冠を拒否するという、英国王妃史上類を見ない決断をしました。これは、イングランド議会との間で大きな摩擦を生むことになります。議会は、カトリック信仰を持つ王妃を快く思わず、たびたび彼女を攻撃する姿勢を見せました。

「陽気な王様」との結婚生活

チャールズ2世は、多くの愛人を持つことで知られていました。「陽気な王様」と呼ばれた彼の女性遍歴は、キャサリンの結婚生活に影を落としました。特に、バーバラ・ヴィリアーズ夫人は、王妃との間で多くのトラブルを引き起こしました。キャサリンは、ポルトガルへの帰国を考えたこともありましたが、チャールズ2世の態度や、自身の不妊に悩み、イングランドにとどまることを決意します。チャールズ2世は多くの愛人との間に子供をもうけ、その中には後に王位継承を巡る争いに巻き込まれる者もいました。

夫の死後と帰国

チャールズ2世の死後、王位を継承したジェームズ2世の治世中、キャサリンはイングランドに留まりました。しかし、名誉革命によってウィリアム3世とメアリー2世が即位すると、彼女はポルトガルへの帰国を決意します。1693年、31年ぶりに故国に戻ったキャサリンは、弟ペドロ2世の庇護のもと、1705年に亡くなるまでポルトガルで暮らしました。

イギリスへの紅茶文化の導入

キャサリンは、イギリスに紅茶文化を伝えた人物としても知られています。当時、紅茶は高級品でしたが、彼女はポルトガル王女としての地位を生かし、毎日紅茶を嗜んでいました。彼女の邸宅では、訪問客に紅茶が振る舞われ、それがイギリスでの紅茶の普及に繋がったとされています。

キャサリン・オブ・ブラガンザの生涯は、宗教対立、王室の陰謀、そして文化交流など、多くの歴史的要素が複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。彼女の一生は、イギリス史、そしてポルトガル史においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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