キャッチ!55

『キャッチ!55』：奈良テレビの地域密着型音楽・情報バラエティ

奈良テレビ放送がおよそ9年半にわたり生放送で届けた音楽とエンターテインメント情報番組、それが『キャッチ!55』（キャッチ・ゴーゴー）です。1978年4月にスタートし、1987年9月まで土曜日の夕方に放送され、当時の若者を中心に支持を集めました。

番組名に込められたメッセージと放送開始の背景

番組名の『キャッチ!55』には、当時の奈良テレビ放送アナログ親局、松尾山からの電波が発信する55チャンネルを、より多くの視聴者に受信してもらいたいという願いが込められていました。当時、奈良テレビはUHF（極超短波）帯で放送されており、大阪府の生駒山などから発信される広域放送のVHF（超短波）帯とは異なり、視聴には別途UHFアンテナの設置が必要でした。このため、地域によっては受信が難しい場所も少なくなく、テレビ局としての広告収入を確保する上で大きな課題を抱えていました。

『キャッチ!55』は、こうしたUHF局としての受信難易度というハンデを乗り越え、放送エリア内での存在感を高め、放送局の活性化を図るための重要な起爆剤として企画、立ち上げられたのです。

番組形式と多彩なコーナー

番組は「テレビ版ディスクジョッキー」というスタイルを取り入れ、テンポの良い進行で視聴者を引きつけました。番組の顔となったのは、奈良テレビのアナウンサーであった岡山正博氏です（番組末期には別のパーソナリティに交代しています）。

主なコンテンツは、当時の若者に人気のあった洋楽を中心とした音楽紹介です。最新のプロモーションビデオを積極的に紹介し、視聴覚の両面から音楽の魅力を届けました。これは、インターネットも衛星放送も普及していなかった当時、地方で最新の洋楽情報を得る貴重な機会となっていました。

音楽だけでなく、地域に根ざした企画も番組の特色でした。特に、奈良テレビのサービスエリア内で活動するアマチュアミュージシャンをスタジオに招き、生演奏を披露してもらうコーナーは、地元で音楽活動をする人々にとって貴重な発表の場を提供しました。

また、視聴者との双方向性を重視しており、番組に寄せられたハガキや手紙に書かれたメッセージやイラストなどを紹介する時間を設け、視聴者との距離を縮め、番組への親近感を深めました。リスナー（視聴者）からのリクエストに応える形で進行するディスクジョッキー形式と、こうした視聴者参加型の企画が相まって、番組はより親しみやすいものとなりました。

さらに、エンターテインメント情報番組として、最新の映画情報も番組の重要な柱の一つでした。特に注目されるエピソードとしては、1983年に公開され、国際的にも大きな話題となった映画『戦場のメリークリスマス』を取り上げた際に、なんとメガホンをとった大島渚監督ご本人へのインタビューの模様を放送したことが挙げられます。これは当時の地方局としては画期的な試みであり、番組の制作意欲と影響力を示す事例と言えるでしょう。

放送時間の変遷

番組は放送期間中に何度か放送時間の変更を行っています。

1978年4月 - 1979年3月：毎週土曜日 18時00分 - 18時55分（55分間）
1979年4月 - 1980年9月：毎週土曜日 18時00分 - 19時00分（60分間）
* 1980年10月 - 1987年9月：毎週土曜日 18時00分 - 18時45分（45分間）

放送開始当初は55分番組でしたが、一時60分に拡大され、その後終了までは45分番組として放送されました。

関連番組

奈良テレビ放送では、『キャッチ!55』の他にも『UTNジョッキー ミュージック・イン・ナラ』といった音楽関連番組が放送されていました。

『キャッチ!55』は、UHF局として当時の受信環境に課題を抱えながらも、地域に密着し、若者向けの音楽や情報を生放送で届けた意欲的な番組でした。洋楽紹介、地元ミュージシャン支援、視聴者との交流、そして映画情報など、多角的な内容で視聴者のニーズに応え、奈良テレビ放送の発展に貢献した番組と言えるでしょう。

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