キャメロンのフェアファクス卿

キャメロンのフェアファクス卿：アメリカ植民地と清教徒革命を繋ぐ名家の歴史

キャメロンのフェアファクス卿は、スコットランド貴族の世襲爵位であり、その歴史はイングランド下院議員を務めたトマス・フェアファクスが1627年に叙爵されたことに始まります。ヨークシャーに古くから根付いたフェアファクス家は、代々イングランドの歴史に影響を与え、その系譜はアメリカ植民地時代にも深く関わっています。

古きイングランドの貴族家：フェアファクス家の興隆

フェアファクス家は、1515年から1700年頃にかけてヨークシャーのデントン・ホールを拠点としていました。初代キャメロンのフェアファクス卿トマス・フェアファクス（1560-1640）は、エリザベス1世女王の治世に、スコットランド王ジェームズ6世への使節団代表やヨークシャー選出の下院議員を務めた人物です。ジェームズ6世がイングランド王ジェームズ1世として即位すると、トマス・フェアファクスは1627年、スコットランド貴族爵位であるキャメロンのフェアファクス卿に叙せられました。

清教徒革命とフェアファクス家

2代フェアファクス卿ファーディナンドとその子、3代フェアファクス卿トマスは、17世紀半ばのイングランドを揺るがした清教徒革命において、議会軍の司令官として活躍しました。彼らの軍事的な手腕は、この時代のイングランドの政治状況に大きな影響を与えました。3代卿の死後、家系図上の分家筋にあたるヘンリー・フェアファクスが4代卿を継承し、その子孫もヨークシャー選出の議員として政治に関わっていきます。

アメリカ植民地とフェアファクス所領

6代フェアファクス卿トマス（1692-1781）は、アメリカ植民地ヴァージニア北部で広大な領地、フェアファクス所領を相続しました。この500万エーカーを超える土地は、北米植民地における最大の封建的領地として知られ、フェアファクス家の経済的基盤を支えました。しかし、アメリカ独立革命の勃発により、フェアファクス家の封建領主としての権利は次第に制限され、最終的にヴァージニア州によって没収されてしまいます。この出来事は、アメリカ独立革命と、旧来の封建制度の終焉を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

爵位継承の紆余曲折と現代

7代フェアファクス卿ロバートの死後、爵位継承には混乱が生じましたが、1802年にはブライアン・フェアファクスが8代卿として認められました。その後、フェアファクス家の当主はアメリカで生活を続けることとなり、スコットランド貴族としての爵位は忘れ去られていきます。しかし、20世紀初頭、アルバート・フェアファクスがイギリス臣民に帰化し、12代フェアファクス卿として爵位が復活しました。その後の当主たちは、スコットランド貴族の代表議員としてイギリスの政治にも参加し、フェアファクス家の歴史は現代まで続いています。2018年現在、14代フェアファクス卿ニコラス・フェアファクスが爵位を継承しています。

家訓と系譜

フェアファクス家の紋章には、「有言実行(Fare fac)」という家訓が刻まれています。これは、家名「フェアファクス」に由来するカンティング・モットーです。この家訓は、フェアファクス家が貫いてきた行動力と責任感を象徴していると言えるでしょう。

フェアファクス家の歴史は、イングランド貴族の系譜、清教徒革命、そしてアメリカ植民地時代の歴史を理解する上で重要な要素となります。その栄光と挫折、そしてアメリカ独立革命という大きな転換点における彼らの運命は、歴史研究の重要な主題の一つです。

もう一度検索