キャヴァーン・クラブ

キャヴァーン・クラブ：リヴァプールの音楽史を刻む伝説のナイトクラブ

1957年1月16日、イギリス・リヴァプールのマシュー・ストリートに、ジャズクラブとしてキャヴァーン・クラブがオープンしました。第二次世界大戦中に防空壕として使われていた地下室を改装した、独特の雰囲気を持つクラブです。パリのジャズクラブ密集地区をモデルに、アラン・スタイナーによって設立されました。

開業初期とビートルズとの出会い

当初はジャズクラブとして営業していましたが、次第にスキッフルバンドのたまり場となっていきました。転機となったのは、ビートルズの前身バンドであるクオリーメンの出演です。ゴルフ仲間からの紹介がきっかけで、最初はゴルフ場で実力を見せた後、1957年8月7日、キャヴァーン・クラブのステージに立つこととなりました。

ここで、ビートルズの音楽性における重要な出来事が起こります。当初はスキッフル音楽を演奏していましたが、ジョン・レノンの提案でエルヴィス・プレスリーのロックンロールナンバーを演奏。オーナーであるスタイナーに制止されるも、ロックンロールへの道を歩み始めました。ポール・マッカートニーとジョージ・ハリソンも後にクオリーメンに加わり、キャヴァーン・クラブで演奏を始めました。

1959年、スタイナーはクラブを売却し、キャヴァーン・クラブはブルースやビートミュージックのバンドが演奏する場となっていきました。1961年1月、ビートルズはキャヴァーン・クラブで初めて演奏。その後、ビートルズをスターダムに押し上げた人物、マネージャーのブライアン・エプスタインがキャヴァーン・クラブで彼らの演奏を見て感銘を受け、マネージャーを引き受けることを決めました。

ビートルズとキャヴァーン・クラブの黄金時代

1961年から1963年にかけて、ビートルズはキャヴァーン・クラブで精力的に演奏を続けました。彼らの演奏は人気を博し、「ビートルマニア」と呼ばれる熱狂的なファンを生み出しました。しかし、人気が出たことで、彼らを守るため、こっそりと出入りする必要が出てきました。1963年8月23日、ビートルズはキャヴァーン・クラブでの最後の演奏を終えました。この頃にはすでに、EMIとレコーディング契約を結んでいました。

ビートルズの後も、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、クイーンなど多くの著名なミュージシャンがキャヴァーン・クラブで演奏しました。現在も多くのアーティストが演奏しており、音楽シーンの中心地としての役割を担っています。

閉店と再建

1973年3月、キャヴァーン・クラブはマージーサイドの鉄道工事のため閉店しました。しかし、1984年4月、開業当時のレンガや設計図を用いて再建され、再開されました。経済的な困難を乗り越え、現在に至るまで営業を続けています。

キャヴァーン・クラブの現在

現在では世界的に有名な観光スポットとなっていますが、第一義的には音楽クラブとしての役割を果たしています。オリジナル曲を演奏するバンドからトリビュートバンドまで、毎週約40組のバンドが出演しています。また、裏部屋では有料イベントやシークレットライブも開催されています。

クラブの外側の部屋は観光スポットとして整備され、多くの観光客が訪れています。毎週ライブが行われており、60年代に活躍したバンドによるイベントも開催されています。2018年には、イギリスの歴史的建造物ベスト10に選ばれるなど、その歴史的価値も高く評価されています。

キャヴァーン・クラブのレガシー

キャヴァーン・クラブは、世界各地に模倣クラブが建設されるほど、その影響力は絶大です。アメリカやアルゼンチン、日本など、世界中にキャヴァーン・クラブを模したクラブが存在しています。しかし、オリジナルのキャヴァーン・クラブは、音楽シーンに多大な影響を与え続けた唯一無二の存在であり続けています。 リヴァプールの音楽史、そしてロックンロールの歴史において、キャヴァーン・クラブは欠かすことのできない重要な存在なのです。

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