キリストの復活 (ベッリーニ)

ジョヴァンニ・ベッリーニの『キリストの復活』は、初期イタリア・ルネサンスのヴェネツィア派を代表する作品です。1475年から1479年にかけて制作されたこの絵画は、元々は板に油彩で描かれていましたが、後にキャンバスに移されました。

この作品は、ヴェネツィアのサン・ミケーレ・ディ・ムラーノ教会にあるマリーノ・ゾルジ礼拝堂のために描かれたものです。ムラーノ島にはヴェネツィアの人々の墓地があり、「最後の審判」の後の復活を願う依頼者の思いと、「キリストの復活」の主題が合致したと言えます。

ベッリーニは、義兄であるアンドレア・マンテーニャから大きな影響を受けており、本作にもその影響が見られます。例えば、左上部の木の上の鵜や、前景左側の兵士の盾などに、マンテーニャの影響が認められます。しかし、ベッリーニが描く空の微妙な光の描写は、マンテーニャには見られないものです。ピンクがかったオレンジ色の雲と、まだ太陽光を浴びていない暗い色の雲が、早朝の空をドラマチックに演出しています。

ヴェネツィア派絵画の基礎を築いたベッリーニは、光の効果を巧みに用いて空間に統一感を持たせることに長けていました。本作でも、空、風景、登場人物が等しく早朝の光に包まれています。しかし、復活したイエス・キリストだけは、早朝の光とは異なる白い光を浴びています。この対比によって、作品は写実主義と象徴主義を融合させた独特な表現を生み出しています。

キリストは復活の象徴である旗を手に空中に浮かび、墓の見張りの兵士たちはその光景に驚いています。眠っている兵士もいれば、天を見上げている兵士もいます。中景には、墓を訪れる3人のマリアの姿が描かれており、背景にはヴェネト地方の田園風景が広がっています。

この作品は、かつてチーマ・ダ・コネッリアーノ、アンドレア・プレヴィターリ、バルトロメオ・ヴェネト、マルコ・バサイティに帰属されたこともありましたが、1903年にベルリン絵画館に収蔵された後の修復によって、ジョヴァンニ・ベッリーニの作品であることが確認されました。

『キリストの復活』は、ベッリーニの卓越した技術と芸術性が結実した傑作であり、ルネサンス美術の重要な作品として評価されています。

参考文献：
有川治男、重延浩、高草茂 編『ベルリン美術館』 1（ヨーロッパ美術の精華）、角川書店、1993年5月。

外部リンク：
ジョヴァンニ・ベッリーニ『キリストの復活』 - ベルリン絵画館 (ドイツ語、英語)

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