キリスト教再建主義

キリスト教再建主義：聖書に基づく社会改革運動

キリスト教再建主義は、聖書を人生のあらゆる面に適用し、社会全体をキリスト教的価値観に基づいて再建しようとするプロテスタント運動です。単に「リコンストラクション」と呼ばれることもあります。この運動は、社会の道徳的再建を目指し、クリスチャンが社会のあらゆる領域で信仰を実践することを求めています。

キリスト教再建主義の5つの柱

再建主義は、以下の5つの主要な柱の上に成り立っています。

1. 前提主義: 聖書は、真理の体系と世界観を啓示しており、クリスチャンと非クリスチャンの間には中立的な領域はないという考え方です。
2. 統治主義: 創世記1:28とマタイ28:18-20にある「生めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ」という神の命令に基づき、人間は神から与えられた支配権を用いて、地球を管理し発展させるべきだと主張します。
3. 神法主義: 新約・旧約聖書の倫理的法則を、家族、教会、国家といった社会のあらゆる組織に適用しようとする考え方です。
4. 契約主義: 聖書における契約の概念を重視し、神との契約、人間同士の契約を強調します。
5. 後千年王国主義: イエス・キリストの初臨によって神の国が始まり、歴史を通してキリスト教信仰の普及によって地上の全域に広がるとする終末論です。

キリスト教再建主義の特徴

この運動は、カルヴァン主義の影響を受けつつ、個人の信仰の再生と、最小限の国家という考え方を重視しています。ユダヤ教再建主義や進歩的再建主義とは明確に区別され、アメリカ南北戦争後の再建とは関係ありません。

背景と影響

アメリカでは「アメリカ再生論」として注目を集め、1987年には『クリスチャニティ・トゥデイ』誌で特集されました。旧約時代のイスラエルを理想国家として捉え、旧約聖書の律法（十戒、処罰規定、経済的規定など）を現代社会に適用しようとする試みが特徴です。家族中心の生活観や教育観、共産主義への反対なども提唱されています。しかし、律法の具体的な適用については、様々な解釈があります。ウェストミンスター信仰告白を遵守する教会では基本事項となっていますが、現代社会への適用については意見が分かれています。

主要な指導者

この運動の中心人物として、R・J・ラッシュドゥーニーが挙げられます。彼はこの運動に関する30冊以上の著作を残しています。ゲイリー・ノースも指導的な役割を果たし、キリスト教経済研究所を主宰していました。日本では、富井健氏が再建主義を広める上で重要な役割を果たしました。

日本のキリスト教界における評価

日本では、富井健氏が牧師を務めていた聖書キリスト教会において、再建主義が教えられていましたが、教会からは「異端ではないが危険な教え」と宣言されました。日本の多くの教会では、この神学を適用することに対する懸念が広く共有されていますが、これは日本独自の現象であり、必ずしも海外の教会でも同様の認識が共有されているわけではありません。

主要な文献

『聖書律法綱要』（ラッシュドゥーニー著、富井健訳）
The Institute of Biblical Law (1973)
Biblical Blueprint Series (1990)
Tools of Dominion (1990)

まとめ

キリスト教再建主義は、聖書に基づいた社会改革運動として、世界中に影響を与えています。その思想は多角的で、社会の様々な側面に影響を与えようとする試みは、賛否両論を巻き起こしています。この運動の思想と影響を理解することは、現代社会を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

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