キリスト発言

1966年、ビートルズとキリスト教を巡る大騒動：キリスト発言

1966年、ジョン・レノンはイギリスの新聞のインタビューで、ビートルズの人気がキリスト教を超えたという発言をしました。この発言は、当初イギリスではさほど問題視されませんでしたが、アメリカの雑誌『デイトブック』に一部が抜粋されて掲載されたことで、事態は急変します。

発端：イギリスでの発言とアメリカの反応

レノンの発言は、当初はイギリス国内では「いつものレノンの毒舌」程度に受け取られ、大きな問題にはなりませんでした。しかし、この発言がアメリカで掲載されると、状況は一変します。特に、アメリカ南部では強い反発を招き、多くのラジオ局がビートルズの楽曲の放送禁止を決定。レコードの焼却を呼びかける動きも発生しました。

『デイトブック』誌は、アメリカの若者向け雑誌ながら社会問題や政治にも言及する姿勢をとっており、ビートルズ側も同誌との関係を良好に保っていました。この雑誌が、レノンの発言を大きく取り上げたことが、騒動の拡大に繋がったと言えるでしょう。

抗議と脅迫：激化する反発

アメリカのラジオ局による放送禁止は、全国規模へと拡大しました。特にバイブルベルトと呼ばれる南部地域では、[ビートルズ]]への反感が強まり、レコードや関連書籍の焼却事件が頻発しました。[[クー・クラックス・クラン]もこの動きに加担し、状況はさらに悪化しました。

ビートルズ自身は、当初は騒動を深刻に捉えていませんでしたが、脅迫状が多数届くなど、危険な状況に陥ります。マネージャーであるブライアン・エプスタインは、この騒動と、フィリピン公演におけるトラブルの影響で健康を害し、アメリカへ渡って対応に追われることになりました。日本公演は、アメリカとは異なる雰囲気で行われましたが、それでも殺害予告を受けるなど、ビートルズは緊迫した状況下に置かれていました。

レノンの謝罪とアメリカのツアー

事態を重く見たビートルズは、1966年8月11日、シカゴで記者会見を行い、レノンは発言について釈明と謝罪を行いました。レノン自身は釈明に消極的でしたが、バンドの危機と公演続行のため、会見に臨んだのです。この謝罪によって、アメリカの多くの地域で抗議活動は沈静化していきました。

その後も、アメリカ公演は継続されましたが、ワシントンD.C.ではKKKメンバーによるデモが行われたり、メンフィス市議会が非難声明を出したりと、緊張感の漂う状況は続きました。メンフィス公演では、銃声のような音が響き渡るハプニングもありましたが、予定されていた全公演は無事終了しました。

余波とレノンの死

レノンは後に、この騒動について「あの発言をしなければ、今もなお公演を続けていただろう」と語っています。その後も、宗教や社会体制への疑問を歌にしたレノンの作品は、一部に激しい反発を招くことになりました。1980年、レノンは「キリスト発言」を理由に、マーク・チャップマンによって殺害されました。チャップマンはレノンの反宗教的な発言に憤慨し、犯行に及んだとされています。

2008年には、ヴァチカンの公式新聞がキリスト発言について再び触れましたが、ビートルズへの称賛で締めくくられ、時を経て、この騒動は歴史的な出来事として再評価されるようになったと言えるでしょう。この出来事は、音楽と宗教、そして表現の自由について、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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