キリル・ウラジーミロヴィチ

キリル・ウラジーミロヴィチの生涯

キリル・ウラジーミロヴィチ（1876年10月12日 - 1938年10月12日）は、ロシア帝国の皇族であり、海軍少将としても知られています。ロシア革命の激動の中で、彼は皇族家の長として名目上のロシア皇帝を自称しました。彼の生涯は、王族としての運命と海軍軍人としてのキャリア、さらに政治的な運命が密接に絡み合っています。

幼少期と教育

キリルはロシア皇帝アレクサンドル2世の三男ウラジーミル大公とその妻マリー妃の次男として、ツァールスコエ・セローで生まれました。兄アレクサンドルが幼い頃に亡くなったため、キリルは事実上、大公一家の長男として育てられました。母マリーはメクレンブルク＝シュヴェリーンの王族の出身であり、信仰を保持するために正教へは改宗しませんでしたが、後に改宗してマリヤ・パヴロヴナと名乗りました。キリルはロシア大公の称号とともに、称賛される名「Его Императорское Высочество」を授けられました。

1896年には海軍幼年団を卒業し、その後は一等巡洋艦や戦艦での任務に従事しました。特に日露戦争では太平洋艦隊に参加し、戦艦「ペトロパヴロフスク」に配属されました。しかし、戦艦は日本海軍の伏せた機雷により沈没し、キリルは重傷を負います。

結婚とロシア革命への道

1905年、キリルは従妹であるザクセン＝コーブルク＝ゴータ家のヴィクトリア・メリタ王女と結婚しました。この結婚は、彼女の過去の離婚のために宮廷で大きな騒動を引き起こしました。皇后アレクサンドラはヴィクトリアを嫌い、婚姻を反対する声が大きくなりました。間もなく、ニコライ2世はキリルの年金や皇族の称号、軍籍を剥奪し、彼は国外への亡命を余儀なくされます。しかし1909年に父が亡くなると、ニコライ2世は彼を海軍大佐として復職させ、妻ヴィクトリアもロシア大公妃の称号を受けました。

二人の間には3人の子供が誕生しました。マリヤ、キーラ、ウラジーミルと、いずれも王族の家系にふさわしい名声を持つ子供たちでした。キリルは軍歴を重ねていく一方で、1917年の二月革命では臨時政府に忠誠を誓い、制服に赤いリボンをつけることに決めましたが、これが家族からの反感を買い、裏切りとして非難される結果になりました。

亡命生活と帝位請求者の道

十月革命以降、キリルは家族を連れて亡命することになりました。彼は1922年に「ロシア帝位の保護者」を名乗り、1924年には「全ロシアの皇帝にして専制君主」と宣言しました。彼は合法的な帝位請求者としての立場を宣言しましたが、その背後には母がプロテスタント信徒であったため、ロシア皇族の一部から反対意見も上がりました。

亡命中、キリルは正統王朝主義者からの支援を受けて生活をしていましたが、彼の帝位請求には賛否が分かれました。特に、彼がソヴィエト体制の要素を受け入れる考えを示したことから、「ソヴィエトのツァーリ」という揶揄もされました。彼は、第二次世界大戦中のムラドロッシという組織から支持を得ましたが、彼自身の直感に従い、再建の見込みに疑問を持つようになりました。

キリルは1938年に亡くなり、その遺体はドイツのコーブルクに埋葬されましたが、のちにサンクトペテルブルクに移葬されました。彼の死後、息子ウラジーミルが家長の地位を継承しましたが、一部の人々は彼を正統な後継者として認めませんでした。キリルの生涯は、王族の宿命と革命の嵐の中でどのように繋がり、影響し合っていたのかを物語っています。

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