キリング・フィールド (映画)

『キリング・フィールド』（原題: The Killing Fields）は、1984年に公開された英米合作映画です。この作品は、ニューヨーク・タイムズの記者としてカンボジア内戦を取材し、後にピューリッツァー賞を受賞したシドニー・シャンバーグ氏の体験に基づいた実話を映画化したものです。1985年のアカデミー賞では、助演男優賞、編集賞、撮影賞の3部門を受賞しました。

特に注目すべきは、カンボジア人助手のディス・プランを演じたハイン・S・ニョール氏です。ニョール氏はカンボジア出身の医師であり、実際にクメール・ルージュの支配下で4年間もの強制労働を経験しました。演技経験が全くない素人であったにもかかわらず、この作品でアカデミー助演男優賞を受賞するという快挙を成し遂げました。

あらすじ

1973年5月、アメリカ人ジャーナリストのシドニー・シャンバーグと、現地の新聞記者であり通訳でもあるディス・プランは、カンボジア内戦の取材を行っていました。ポル・ポト率いるクメール・ルージュが勢力を増し、アメリカ軍が撤退を開始する中、シャンバーグはプランの一家をアメリカに亡命させようとします。しかし、プランは仕事への使命感から妻子のみをアメリカへ送り、自身はカンボジアに残ることを決意し、シャンバーグと共に取材活動を続けます。

やがてカンボジアはクメール・ルージュに完全に支配され、シャンバーグたちはフランス大使館に避難します。外国人であるシャンバーグらは帰国できますが、カンボジア人のプランは逃れることができません。そこでシャンバーグらはパスポートを偽造してプランを亡命させようとしますが、写真の画像が消えてしまい失敗。プランはフランス大使館を出ることを余儀なくされ、クメール・ルージュの支配する集団農場へと移送されます。

集団農場では、人々が理由もなく銃殺されていきます。プランは農場からの脱走を試み、その道中で無数の人骨を目にします。脱走に失敗し行き倒れたプランは、別の集団農場の幹部に助けられ、その世話をすることになります。

一方、シャンバーグはプランの行方を捜索しますが、消息は掴めません。ピューリッツァー賞を受賞した際、取材仲間だった記者からプランを見捨てたと非難され、自責の念に苦しみます。

プランは農場幹部に親身に扱われますが、元新聞記者であった経歴を隠していました。しかし、BBC放送を隠れて聞いているところを幹部に見つかり、インテリであることが露呈してしまいます。意外にも幹部はプランを殺さず、自身の信条を語り始めます。その幹部は「カンボジアを愛しているが、クメール・ルージュのやり方は間違っている」と語り、「自分に万一のことがあったときは、自分の子供をつれて外国に逃亡してほしい」と地図と金を渡します。その後、クメール・ルージュの銃殺をやめさせようとしたために幹部は殺害されます。

プランは幹部の子供を連れ、他の仲間たちと国外逃亡を図ります。幾多の苦難の末に隣国への逃亡に成功しますが、幹部の子供は途中で地雷により死亡します。逃亡先の難民キャンプで、プランはついにシャンバーグとの再会を果たします。

この映画は、極限状態における人間の尊厳と友情、そして戦争の残酷さを深く考えさせられる作品です。

賛否

映画公開直後、本多勝一氏は政治的で差別的な内容であるとして批判しました。本多氏は、カンボジア大虐殺の背景や全体状況が描かれていないため、観客にカンボジア情勢を誤解させる曖昧な表現が多いこと、シャンバーグがプランの救出のみを考えている点を批判しました。

一方、井川一久氏は、ポル・ポト政権による殺戮と文明破壊の実態を十分に伝えていない点を指摘しつつも、歴史の真実に迫ろうという意思や、シャンバーグとプランの関係を評価しています。

古森義久氏は、サイゴン陥落時にベトナム人の部下を残して帰国した経験から、この映画を絶賛しています。

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