キ38 (航空機)

キ38：大日本帝国陸軍の双発戦闘機計画

キ38は、大日本帝国陸軍が取り組んだ双発複座戦闘機の計画であり、その開発は川崎航空機工業によって行われました。この機体の設計は1937年3月に始まり、当時各国で進行していた双発戦闘機のトレンドを背景に置いています。日本の陸軍航空本部は、爆撃機の護衛を主な任務とする双発機の研究方針を打ち出し、その一環として川崎にキ38の試作を命じました。

陸軍は、この戦闘機に対し、単座戦闘機に匹敵する性能とともに、400 kmから500 kmの行動半径を持つことを求めました。もともとは機関砲を装備する計画もありましたが、技術的な制約から最終的には固定機銃2丁と旋回機銃1丁に留まることとなりました。

川崎航空機工業では、技師の井町勇が設計主務者として選ばれ、迅速に設計作業に取り掛かりました。1937年10月には基本設計とモックアップが完成。ところが、できあがった機体は陸軍の要求を満たすものではなく、その結果、同年12月にはキ38を基に新たにキ45双発戦闘機の開発が命じられ、キ38の開発計画は中止される運命を迎えました。

当初、キ38は空冷エンジンと液冷エンジンを組み合わせた3発機としての設計も検討されていましたが、最終的には川崎製の液冷V型12気筒エンジンを2基搭載し、楕円形のテーパー翼を持つ双発機となる設計が選ばれました。

関連機体と計画

このキ38と同時に開発が指示された双発戦闘機には、中島飛行機の「キ37」や三菱重工業の「キ39」がありましたが、いずれもキ38と同じく開発中止が決定され、基本設計の段階にとどまることになりました。1937年には、特にキ39の姉妹機にあたる司令部偵察機「キ40」の構想も存在しましたが、これも具体的な形を得ることはありませんでした。

このように、キ38の開発は日本の軍用機史において重要な位置を占めるものの、結局は実用化には至らなかったことから、双発機計画の一つとして記憶されています。これらの試みは、当時の航空技術の進展や戦闘機の役割を理解するうえで価値のある資料となっています。

参考文献

• - 『屠龍/九九軍偵・襲撃機 軍用機メカ・シリーズ6』光人社、1993年、104頁。
• - 歴史群像編集部 編『決定版 日本の陸軍機』学研パブリッシング、2011年、39頁。

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