キ73 (航空機)

キ73 - 大日本帝国陸軍の偵察機計画

キ73は、大日本帝国陸軍が1940年に設計を開始した偵察実験機で、実際に製作されることはありませんでした。この機体は、連合軍から「Steve」というコードネームで呼ばれました。

計画の背景

1940年、陸軍航空本部は新しい研究方針に基づいて超高速偵察機の開発を決定し、三菱重工業に試作を発注しました。初期の設計概念には、最大水平速度が750 km/h以上、行動半径が6,000 km、常用高度が5,000 mを超えるという要求が含まれていました。エンジンは当初、三菱の「ハ203」または「ハ211」を用いる予定でした。

当初の計画では、初号機の完成は1942年6月とされましたが、計画の変更が相次ぎ、最終的には1944年12月に完成予定、審査が行われるのは1945年10月と設定されています。試作機2機と、追加の3機の製作が計画されましたが、結局このプロジェクトは実現することはありませんでした。

機体の設計

キ73は敵の航空偵察を目的としてデザインされた複座の高速機で、航空撮影装置を装備し、無線機も内蔵されていましたが、武装は求められていませんでした。エンジンの選定に関しては、単発の案と双発の案が存在し、はっきりとした決定がされずに終わりました。また、最大速度は800 km/h以上を目指し、二重反転プロペラの使用も計画に盛り込まれていました。

さらに、1941年に安藤成雄航技中佐を中心に作成された研究では、三菱「ハ211-II」という空冷の18気筒エンジンを用いて最大速度870 km/hを実現する案も検討されました。これはキ73の計画における一つのバリエーションとして位置づけられました。

モデルの流通

興味深いことに、海外の模型メーカーはキ73を「キ83の単発型」としてレジンキットとして販売しています。これは、キ73のデザインが一部の模型愛好家の間で注目され続けていることを示しています。

このように、キ73はその計画が実行されることはありませんでしたが、航空機開発史において重要な意味を持つ試作機の一つとして記録されています。実機が製作されなかったものの、その設計や計画内容は今なお技術者や愛好者の興味を引くテーマとなっています。

参考文献

• - 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年
• - 佐原晃『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』イカロス出版、2006年

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