ギア-GEAR-

『ギア-GEAR-』は、京都でロングラン上演されているノンバーバル（非言語）演劇作品です。専用劇場であるアートコンプレックス1928（ギア専用劇場）にて、連日公演が行われています。

作品の特徴

この作品最大の特徴は、セリフが一切ないことです。マイム、ブレイクダンス、マジック、ジャグリングといった多様なパフォーマンスと、緻密に計算された舞台セット、レーザー光線などの光学演出、そして音響や風といった特殊効果を駆使し、ストーリーを表現します。

物語は、荒廃した未来社会を舞台に、おもちゃ工場で働くロボット「ロボロイド」と、かつてその工場で生産されていた人形「ドール」を中心に展開します。人間が去った後、ロボロイドたちは徐々に人間らしさを獲得していきますが、工場の停電により機能停止に陥ります。そんな中、ドールが「人の心」を持つことで、ロボロイドたちの再生を願う、というストーリーです。

この物語では、あえて人間役を登場させず、ロボットと人形を描くことで、「人間とは何か」という根源的な問いを観客に投げかけています。AI時代における人間の存在意義を問う、示唆に富んだ作品と言えるでしょう。

公演の魅力

『ギア-GEAR-』の魅力は、その総合的なエンターテイメント性にあります。技巧を凝らした舞台セット、演者の身体表現、迫力のあるパフォーマンス、美しい光学演出、そして臨場感あふれる音響。これらの要素が一体となり、観客を物語の世界へと引き込みます。公演時間は約90分で、子どもから大人まで、幅広い世代が楽しめる内容となっています。

また、言葉に頼らないノンバーバル演劇であるため、言語の壁がなく、外国人観光客にも人気が高いです。実際に、TripAdvisorの「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」で上位にランクインしたこともあります。さらに、未就学児も入場できる「キッズデー」が設けられるなど、ファミリー層にも配慮した公演となっています。

舞台裏のこだわり

本作品のもう一つの特徴として、特定の演出家を置かず、観客からのアンケートを基に合議制で作品のブラッシュアップを行っている点が挙げられます。これにより、「御客様（オン・キャクヨウ）」という架空の人物が演出家としてクレジットされています。

このシステムは、観客の意見を積極的に取り入れ、常に作品をより良いものへと進化させようという、制作側の熱意の表れと言えるでしょう。

公演の歴史

『ギア-GEAR-』は、2010年1月に大阪でトライアウト公演を開始し、2012年4月からは京都のアートコンプレックス1928を専用劇場としてロングラン公演を開始しました。当初は苦戦したものの、口コミやリピーターが増え、2015年には1000回公演を達成。2023年5月には観客動員数28万人、7月には公演回数4000回を突破するなど、人気はますます高まっています。

また、海外公演も積極的に行っており、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、ロシアなど、様々な国で公演を行っています。2017年からは、千葉県千葉市で『ギア-GEAR- East Version』の公演も行われました。

総合的なエンターテイメント

『ギア-GEAR-』は、日本の伝統芸能である歌舞伎を参考に、現代アートの手法を取り入れて創作された作品です。舞台美術、パフォーマンス、音楽、そして観客との一体感を大切にした、総合的なエンターテイメントと言えるでしょう。

この作品は、夜の観光コンテンツが少ないと言われる京都において、新たな体験型観光コンテンツとしても注目を集めており、日本における新たな取り組みの事例として紹介されています。

『ギア-GEAR-』は、言葉を超えた感動と興奮を味わえる、唯一無二の舞台作品です。

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