ギャレット ATF3

ギャレット ATF3 エンジン

ギャレット ATF3はアメリカ軍によるF104識別符号で知られる、特異な構造を持つ3軸式ターボファンエンジンです。このエンジンはギャレット・アイリサーチ社のカリフォルニア部門で開発され、現在はハネウェル・エアロスペース社によってサポートされています。このエンジンが注目されるのは、2回の180度の流れの方向転換が行われる点にあります。その結果、空気の流れが通常とは異なる経路を通るため、特有の運用特性を持っています。

設計と構造

ATF3の内部には5段の軸流式圧縮機が配置され、その後ろには燃焼器とタービンが設置されています。圧縮機は低圧ファンと中圧および高圧をもつ異なる段数のシステムから成り立っています。特に注目すべきは、エンジン内で空気が再び180度方向を変えて、ファンのバイパスダクトを通じて外部に排出される点です。また、すべての補機はエンジンの後部、テールコーンの下に設置されており、効率的な設計がなされています。

ATF3エンジンは、ターボファンエンジンの特徴を持ちながらも、マスフローを最適化するためにユニークな設計が施されています。この結果、エンジンからの赤外線放射が低減され、従来のレーダーや赤外線センサーで捕捉されにくい特性を持つことが実証されています。

実績と搭載機

ATF3は、テレダイン社のYF104-GA-100として、Ryan YQM-98 Compass Cope R高高度無人機に最初に搭載され、初飛行を遂げました。その後、U-2高高度追跡機のパイロットたちは、YQM-98Aがレーダーや赤外線センサーでは検知できなかったと証言しています。これらの特性は、後にノースロップのステルス実証機であるタシット・ブルーにも採用される要因となりました。

特にアメリカ合衆国沿岸警備隊が開発したダッソーHU-25ガーディアンがATF3の代表的な搭載機の一つです。また、ダッソー・ファルコン20G、ダッソー・ファルコン200などもATF3エンジンを搭載し、幅広い運用がされています。

技術的課題と訴訟

ATF3はノースアメリカン・ロックウェル社の60セイバーライナービジネスジェットにも採用されましたが、技術開発や製造の問題により、納品が遅れました。この影響で、ノースアメリカン・ロックウェル社はギャレット社に6000万ドルの賠償を要求し、裁判を経て賠償額は500万ドル以下に軽減されました。

航続距離の性能が高いため、ATF3は沿岸警備隊の発注したファルコンの派生機種にも再び採用されました。

仕様概要

• - 形式: 3軸式軸流式ターボファン
• - 全長: 102.0 in (2,591 mm)
• - 直径: 33.6 in (853 mm)
• - 乾燥重量: 1,125 lb (510 kg)
• - 推力: 離陸時 5,440 lbf (24.20 kN)、巡航時 1,055 lbf (4.69 kN)
• - 空気流量: 離陸時 40 lb/s (73.5 kg/s)

このようにATF3エンジンは、独自のデザインと性能特性を通じて、さまざまな航空機に搭載されてきました。

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