ギヨーム・ド・ノガレ

ギヨーム・ド・ノガレ

ギヨーム・ド・ノガレ（Guillaume de Nogaret、1260年 - 1313年4月11日没）は、13世紀後半から14世紀初頭にかけて、フランス王国の政治の中枢で活躍した法曹家であり、国王フィリップ4世（端麗王）の最も信頼厚い政治顧問の一人でした。現在のオート＝ガロンヌ県にあたるサン＝フェリックス＝ロラゲの出身です。彼の政敵による記録によれば、祖父は異端として処刑された人物であったと伝えられています。これは、当時の宗教的・政治的な緊張関係を示す背景情報として語られることがあります。

法学を深く修めたノガレは、モンペリエ大学で法学教授を務めた後、1295年にフランス王フィリップ4世の顧問として宮廷に入りました。国王フィリップ4世は王権強化を目指し、教皇権力や封建貴族勢力との対立を深めていましたが、ノガレは法曹家としての知識と鋭敏な政治感覚をもって、国王の政策遂行において重要な役割を果たしました。国王からの信頼は絶大であり、ノガレは常に国王の意向を汲み、その実現のために尽力したとされます。

フィリップ4世の治世における最も劇的な出来事の一つが、ローマ教皇ボニファティウス8世との激しい対立でした。王と教皇の緊張関係が頂点に達した1302年2月11日、ノガレは大法官ピエール・フロートと共に、教皇から発布されたとされる国王にとって不都合な偽の教皇勅書を、パリ市民の前で公然と焼却するという大胆な行動を主導しました。これは教皇権に対する王権の優位を示す象徴的な挑発行為でした。

同年、フロートの後を継いで大法官に昇進したノガレは、国王の政策決定においてさらに中心的な役割を担うようになります。そして1303年9月、彼はイタリアのアナーニでボニファティウス8世を捕縛しようとする事件（アナーニ事件）を主導しました。この事件における激しい精神的衝撃がボニファティウス8世の死につながったとされ、ノガレはこの行為に対してフィリップ4世から土地と金銭という厚い報奨を得ました。アナーニ事件は教皇権の威信を大きく傷つけ、その後のアヴィニョン捕囚へとつながる歴史的な転換点となりました。

ノガレの関与はアナーニ事件に留まりませんでした。彼は、1306年のフランスからのユダヤ人追放とその財産没収、1307年のテンプル騎士団の突然の逮捕、解散、そしてその広大な財産の没収といった、フィリップ4世による強引かつ非情な政策の立案・遂行にも深く関与しました。これらの政策は、国王の財政難を解消し、王権を絶対的なものとするために不可欠な手段と見なされていました。また、1309年にローマ教皇座がフランス南部の都市アヴィニョンに移された、いわゆるアヴィニョン捕囚の実現にも、ノガレは重要な役割を果たしたとされています。

しかし、アナーニ事件におけるノガレの役割は、新たな問題を引き起こしました。ボニファティウス8世の後任として教皇に即位したベネディクトゥス11世は、この事件を主導したノガレを破門に処しました。ノガレは破門の解除を熱心に嘆願しましたが、それが叶う前に、1313年4月11日、パリでその生涯を終えました。彼は波乱に満ちた時代において、フランス王権の強化に貢献した一方で、その手段の強引さから多くの批判も受けた人物でした。

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