クウェート共和国とは？意味をやさしく解説

クウェート共和国：イラク侵攻と短命に終わった傀儡国家

1990年 8月2日、イラクはクウェートに軍事侵攻しました。イラクは、クウェート国内の反政府勢力の要請に応じた形をとりましたが、実際は、石油利権や領土問題などを背景とした侵略行為でした。侵攻後、イラクは即座にクウェート国政府の打倒を宣言し、「クウェート暫定自由政府」の樹立を発表しました。

暫定政府の成立と実態

この暫定政府は、その名称とは裏腹に、イラクの傀儡政権でした。閣僚名簿が発表された際、そのメンバーはほとんどがクウェート人には馴染みのないイラク人であり、国際社会からも広くその傀儡性を見抜かれていました。暫定政府は、首長制から共和制への移行を宣言し、国名を「クウェート共和国」に変更しました。しかし、この変更は国際社会から承認されることはありませんでした。

イラクによる併合と国際社会の反応

暫定政府樹立後も、イラクはクウェートからの完全撤退をせず、クウェート人民軍という新たな軍事組織を設立しました。この組織はイラク軍の退役兵や予備役兵を中心に構成されており、イラク軍の事実上の駐留を意味していました。国際社会は、イラクの行動を強く非難し、経済制裁を含む国連安全保障理事会決議660、661を採択しました。これらの決議は、イラクのクウェートからの即時撤退と、クウェート暫定政府の非承認を明確に示していました。アメリカ合衆国を始めとする多くの国々が、暫定政府を認めず、イラクの侵略を非難しました。日本も同様に、イラクに対して遺憾の意を表明しました。アラブ連盟や欧州共同体もまた、暫定政府を承認しない立場を表明しました。

クウェート共和国の消滅

8月8日、イラクはクウェートを併合し、クウェート共和国は消滅しました。イラクは、クウェートが歴史的にイラクの一部であると主張しましたが、この主張は国際社会から認められることはありませんでした。

暫定政府の閣僚

暫定政府の閣僚は、当初は公表されませんでした。後に発表された閣僚名簿には、クウェート人には馴染みのない名前が並び、そのほとんどがイラク人であると見られていました。暫定政府首相のアラー・フセイン・アリー大佐は、サッダーム・フセイン大統領の娘婿であるという説もありましたが、後に否定されています。いずれにせよ、暫定政府がイラクの傀儡政権であったことは明らかです。

国内外の反応

クウェート国内では、旧クウェート政府側は抵抗を続けました。しかし、国民の間には、旧政府に対する不満も存在しており、暫定政府に対する抵抗運動は限定的なものでした。国際社会は、ほぼ一様にイラクの侵略を非難し、クウェート暫定政府を承認しませんでした。

湾岸戦争とクウェートの解放

1991年、湾岸戦争が勃発し、イラクは敗北しました。その結果、イラク軍はクウェートから撤退し、クウェートは解放されました。クウェート共和国は、わずか数日の寿命で終焉を迎えた、イラクによる侵略と傀儡政権樹立の悲しい歴史として記憶されています。

脚注

本文中に記載されている出来事や人物などは、歴史的事実に基づいて記述されています。

クウェート共和国