クズネツォフ NK-25

クズネツォフ NK-25

概要

ソビエト連邦時代のクズネツォフ設計局によって開発されたNK-25エンジンは、Tu-22M3戦略爆撃機に搭載された高性能な推進システムです。先行するNK-22ターボファンエンジンを基に設計された本機は、特徴的な3軸構造を採用しており、245kN（約25トン）に達する強力な推力を発生させます。これは同時代の航空用エンジンの中でも世界有数の出力であり、ツポレフ設計局のTu-22M3の心臓部として、合計680基が製造され、長期間にわたり運用されました。

開発の軌跡

NK-25の開発プロジェクトは、1971年7月28日に正式にスタートしました。計画開始からわずか一年余り後の1972年10月13日には、最初の試作エンジンが完成し、「製品E」と呼称されました。この新型エンジンは、実際の航空機への搭載試験を通じてその性能が検証されました。具体的には、1974年にはTu-22M2の改良型であるTu-22M2Eに搭載されて飛行試験が行われ、さらに1975年から1976年にかけては、高速試験機として改造されたTu-144LLを用いた広範な飛行試験を通じて、エンジンの特性や信頼性が詳細に評価されました。

一連の開発試験を経て、NK-25は量産体制へと移行しました。生産は1977年6月22日に開始され、およそ20年間にわたる長い期間、1996年まで続けられました。そして、このエンジンを搭載したTu-22M3の運用は、生産開始の翌年である1978年から開始されています。

主要諸元と技術

NK-25エンジンは、高い推力と効率を実現するために、多くの先進技術が盛り込まれています。その中心となるのは、ファン、中圧圧縮機、高圧圧縮機がそれぞれ独立した回転軸を持つ3軸式ターボファンという基本構造です。これにより、エンジンの各部分の回転速度を最適に制御することが可能になり、幅広い飛行条件での効率向上に寄与しています。

以下に、NK-25の主要な技術仕様を示します。

仕様

形式: 3軸式ターボファンエンジン
全長: 7,300 mm
最大直径: 1,770 mm（ノズルハウジングを含む）
乾燥重量: 3,575 kg
総重量: 4,275 kg

主要構成

圧縮機: 3段ファン、5段中圧軸流、7段高圧軸流
タービン: 1段高圧、1段中圧、2段低圧

性能

最大推力: 245.1 kN
バイパス比: 1.45
燃料消費率:
離陸時: 2.1 kg/kgf/時
最大出力時（アフターバーナー不使用）: 0.58 kg/kgf/時

制御システム

* 制御: 電子制御（油圧機械式バックアップ付き）

エンジンの内部構成では、前方に配置された3段のファンが外気を吸い込み、その一部はバイパス流として、残りはコア流として後方に送られます。コア流は中圧および高圧の軸流圧縮機によって高圧化され、燃焼器へと導かれます。燃焼器で燃料が噴射・燃焼し、発生した高温高圧ガスはタービンを回転させ、圧縮機とファンを駆動します。NK-25のタービン部は、高圧・中圧が各1段、低圧が2段配置されており、それぞれが独立した軸を回転させます。エンジン全体の運転は、精密な電子式制御システムによって管理されますが、信頼性確保のため油圧機械式のバックアップシステムも備えられています。

位置づけ

NK-25は、その強力な推力と堅牢な構造により、長距離爆撃機Tu-22M3の要求性能を満たす上で不可欠な存在でした。ソビエト連邦崩壊後も多くのTu-22M3が運用され続けたことは、本エンジンの設計の堅牢さと信頼性の高さを物語っています。1996年に生産は終了しましたが、現在も搭載機の一部が運用されており、冷戦期を代表する大型航空機用エンジンの一つとして歴史に名を刻んでいます。

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