クソ物件オブザイヤー

クソ物件オブザイヤーとは

「クソ物件オブザイヤー」は、不動産業界でその年にもっとも話題となった物件や事件を選出する、ユニークな賞です。Twitterで活動する不動産関係者の集まり「全国宅地建物取引ツイッタラー協会（全宅ツイ）」によって運営されています。

概要

2014年に「次世代に語り継ぎたいプロジェクト100選」としてスタートしました。当初は不動産関係者の内輪ネタでしたが、2015年の大賞受賞物件が注目を集めたことで、広く知られるようになりました。大賞が決まると数万リツイートされるほどの注目度です。

運営元の全宅ツイは、Twitter上の不動産関係者の私的な集まりです。2008年頃、リーマンショックの影響で業界が冷え込み、Twitterを始めたユーザーが多かったことがきっかけで生まれました。特定の業界団体ではありません。

受賞対象は、不動産業界で話題となった物件や事件です。単なる変わった間取りは対象外となります。Twitterユーザーが「#クソ物件オブザイヤー」のハッシュタグをつけて投稿し、運営アカウントがリツイートすることでエントリーが完了します。その後、投票によって受賞にふさわしい案件が選出・表彰されます。

特定の物件を「クソ物件」と呼ぶことについては、法的リスクも存在します。全宅ツイ顧問弁護士は、虚偽情報を流すと偽計業務妨害になる可能性を指摘し、ツイート内容によっては投稿者に警告を行うこともあるとしています。

反響と意義

全宅ツイは、本賞の意義について、時代ごとの不動産事情を記録して次世代に語り継ぐこと、そして「不動産を面白がることが第一義」であると述べています。また、本賞を「不動産業界の年末恒例の奇祭」と自称しています。

弁護士ドットコムは、対象が個人の場合は法的問題が発生しうる一方で、企業や行政に関係するケースでは社会批評の意義があると指摘しています。

「ドリフうどん屋」のその後

2018年に3位を受賞した「ドリフうどん屋」こと「うどんそば桂」は、店主の高齢により閉店しました。しかし、高円寺駅徒歩1分という好立地を活かすため、全宅ツイが事業計画を作成し、クラウドファンディングで資金を集めて土地を借り、「酒チャンス」という居酒屋が開業しました。

クラウドファンディングは開始から12時間で目標金額を達成し、Twitterトレンドにも入りました。敷地幅わずか910ミリメートルという狭小地であるため、押し壁工法を利用して敷地面積いっぱいに建物を建て、カウンターと路面に面する縁側をイメージしたベンチで可能な限り客席を確保しています。

埼玉県川口市のマンションのその後

2020年に2位を獲得した埼玉県川口市のマンション広告は、本賞で注目を浴び、批判を受けたことをきっかけに、キャッチコピーを「『川口』駅直結」から「『川口』駅までバス約12分」に修正しました。

クソ物件オブザイヤーは、単なる面白おかしいイベントではなく、不動産業界の問題点を浮き彫りにし、社会に警鐘を鳴らす役割も担っていると言えるでしょう。

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