クマさんの四季

クマさんの四季

『クマさんの四季』は、1976年に白泉社から刊行された和田慎二による漫画作品です。作者は『スケバン刑事』などで知られていますが、本作はそれとは大きく異なり、ウラルの森を舞台にしたメルヘン作品となっています。

概要

本作は、1973年から1975年にかけて『別冊マーガレット』で発表された3編に、単行本書き下ろしの1編を加えた全4編で構成されています。登場人物は擬人化された動物たちで、クマさんをはじめとする個性的なキャラクターが織りなす、心温まる物語が展開されます。

作者の和田慎二自身も、髭面の容貌から「クマさん」の愛称で親しまれていました。しかし、メルヘン作品として出版されたにもかかわらず、現在では入手困難な状況です。装丁が漫画の単行本というよりも、ハードカバーの児童書に近いことも、古書店で見つけにくい要因となっています。

絶版が決定した際、作者は当時連載中だった『ピグマリオ』の欄外で、「この本はすでに役目を終えたと思います」「版型を変えての出版はありません」というメッセージを発表しました。以降、本作の復刊・再録は行われていません。

ストーリー

クマさんの10月

冬ごもりを前にした森で、魚干し倉が次々と荒らされる事件が発生します。黒オオカミらしき影が目撃され、銀ギツネは黒オオカミをかばうため、自分が倉荒らしの犯人であるかのように装い、森を追放されます。

春の森のクマさん

「クマさんの10月」から半年後。春を迎えた森で、ウサギ族の若者リョーシャが、北にあるウサギ族の国への移住を提案します。最初は反対していたウサギたちも、自分たちがこの森で出来ることは無いのではと考え、移住に傾き始めます。

眠りにつく森

新たな冬が訪れましたが、クマさんは冬ごもりに入らずにいました。帰ってこない友達のこと、そして森で起こる様々な問題が気がかりだったのです。そんなある夜、病弱なノロ鹿の奥さんが出産を迎え、同時にウサギのギザ耳族長が危篤に陥ります。

友を待つ森

森を去った銀ギツネを追い、黒オオカミは旅に出ます。銀ギツネを探してある森へ入りますが、そこはオオカミ族が台頭し、他の動物たちが互いに疑心暗鬼になりながら隠れて暮らしている森でした。

登場キャラクター

クマさん: 本作の主人公。ウラルの森のまとめ役で、森の住人たちから慕われています。パイプを愛する温厚な紳士ですが、助け合いの精神を理解せずに森を荒らす者には毅然とした態度で立ち向かいます。
黒オオカミ: 寡黙で信義に厚い男。多くの森の住民から恐れられていますが、クマさんとはパイプ仲間として親しくしています。
銀ギツネ: うっかり者ですが、他人のためにわが身を顧みない優しい青年です。
リョーシャ: ウサギの青年。別の森から来たウサギの血が混じっているため、白ウサギの中でただ一人、茶色の毛と金色の眼を持っています。
ミオ: ウサギの族長の孫娘。リョーシャとは幼馴染で、兄妹のように育ちました。
ギザ耳族長: ウサギ族の族長。「ギザ耳」の名の由来である折れ曲がって先がギザギザになった耳は、ウサギ族が今の森に定住する以前の争いで負った傷です。
* ウサギの双子: いつも二人で森の中を走り回っては、いたずらをしています。

『クマさんの四季』は、和田慎二の新たな一面を見ることができる、貴重な作品と言えるでしょう。

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