クムリポ

クムリポとは

クムリポ（Kumulipo）は、ハワイ王国に古くから伝わる創世神話であり、宇宙の始まりから続く歴代の王の業績までを描いた壮大な叙事詩です。この神話の名はハワイ語で「起源」を意味し、特に18世紀初頭、ロノイカマカヒキ王子の誕生を祝うために編纂されたとされています。これは、日本で言うところの古事記に匹敵する重要な文化遺産です。

クムリポの全体構成は、16パートに分かれ、2102行の散文によって成り立っています。この物語は、ハワイの地球創生や人間の始まり、さらには初代から続く王の系譜を詳細に語り継いでいます。ハワイでは元々、文字を持たず、口承の文化が中心であったため、クムリポも歌や詩として、世代を超えて伝えられてきました。

文献的背景

クムリポに関する記録が広がるようになったのは、1820年代からで、ハワイ語をアルファベットに置き換える試みによって、口承で伝えられていた物語を文書化する動きが始まりました。特に、イギリスの言語研究者ウィリアム・エリスは1823年にハワイ諸島を訪れ、現地の神話を聞き取って記録に残しました。その成果は『Narrative of a tour through Hawaii in 1823』として出版され、この時期の記録では最古のものと考えられています。この書物は、英語での神話の概略を紹介し、後の研究や関心を引くための重要な資料となりました。

1889年には、ハワイ王国第7代のカラカウア王がクムリポを公表し、続いて妹であるリリウオカラニ女王が1897年に英訳を行いました。これにより、クムリポは国際的にもその名を知られるようになりました。

研究の影響

クムリポは後の研究者たちに多大な影響を与え、ハワイの文化や神話に対する理解を深めるための貴重な資料とされています。特に、Martha Warren Beckwithの『Hawaiian Mythology』や、後藤明の著書『南島の神話』及び『ハワイ・南太平洋の神話』は、クムリポをはじめとするハワイの神話に関する重要な研究として広く知られています。

クムリポは、ハワイを越えて、世界中の文化における神話の重要性を再確認させるものであり、他の文化と同じく、時間を超えた価値を持つ物語を提供しています。これにより、私たちは人間の起源や歴史を考え直し、文化の多様性を理解する手助けとなるのです。

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