クライストチャーチ大聖堂 (クライストチャーチ)

クライストチャーチ大聖堂：歴史と再建への道のり

クライストチャーチ大聖堂は、ニュージーランドのクライストチャーチ市中心部に位置する、アングリカン・チャーチの大聖堂です。アングリカン・コミュニオンに属し、アオテアロア・ニュージーランド・ポリネシア聖公会クライストチャーチ教区の主教座聖堂として重要な役割を担っています。

歴史

1864年、イギリスからの移民たちの手によって教会建設が始まりました。当初は木造建築が予定されていましたが、地元で教会建築に適した石材が発見されたため、石造建築へと変更されました。建設には船大工も参加し、天井付近には船底を模した木組みが施されています。設計はイギリス人建築家ジョージ・ギルバート・スコットの原図を基に、同じくイギリス出身のベンジャミン・マウントフォートがゴシック・リヴァイヴァル様式で手掛けました。しかし、資金難のため建設には約40年の歳月を要し、1904年にようやく完成しました。

建設中には、1881年、1888年、1901年と3度も大きな地震に見舞われ、尖塔の頂上が落下するなどの被害を受けました。度重なる困難を乗り越えて完成した大聖堂は、クライストチャーチの象徴として市民に愛されてきました。

現在（2024年5月21日）のクライストチャーチ主教はヴィクトリア・マシュー、首席司祭はリンダ・パターソンが務めています。

大聖堂の魅力

英国国教会の流れを汲むこの大聖堂は、年間70万人以上の来場者が訪れる観光名所です。内部は多くのステンドグラスや彫刻品で飾られ、荘厳な雰囲気を醸し出しています。多言語での礼拝や様々な宗教儀礼が執り行われる他、クライストチャーチ交響楽団主催のコンサートが開催されるなど、文化的な催し物にも利用されています。

かつては有料で塔に登ることもでき、市街を一望できるスポットとして人気を集めていました。無料のガイドツアーも開催され、大聖堂の歴史や建築について学ぶことができました。

地震による被害と再建

2011年、クライストチャーチを襲った大地震により、大聖堂は甚大な被害を受けました。北側尖塔部分が崩壊し、その後の余震で正面のステンドグラスや西側の壁が大きく崩れ落ちました。

2012年には、修復に巨額の費用がかかること、内部が危険な状態であること、そして今後も地震が起こる可能性があることから、修復再建を断念し、解体が決定されました。しかし、市民の強い要望を受け、再建に向けた動きが始まりました。

2013年8月には、日本人建築家、坂茂氏の設計による紙管を使った仮聖堂が建設されました。これは、少なくとも10年間使用される予定で、被災者の心の拠り所となっています。

2018年には、大聖堂再建のための会社が設立され、再建計画が本格的に始動しました。残存部分の免震レトロフィット工事、修復、撤去された尖塔や正面バラ窓の再建、耐震補強のための鉄骨やコンクリートによる枠の挿入などが計画されています。現在も再建に向けた工事が進められています。

大聖堂周辺

大聖堂周辺は、クライストチャーチの中心地として賑わっています。クライストチャーチ唯一の市内鉄道であるトラム（路面電車）が大聖堂の周囲を環状運転しており、観光客に人気です。大聖堂正面にはニュージーランド銀行（BNZ）、キーウィ銀行（Kiwi Bank）、オーストラリア・ニュージーランド銀行（ANZ）など、ニュージーランドの主要金融機関の支店が立ち並んでいます。また、カフェテリアや観光案内所も隣接しており、観光客にとって便利なエリアとなっています。

その他の出来事

クライストチャーチ大聖堂では、過去に様々な出来事がありました。1995年にはオートバイ設計者ジョン・ブリッテンの葬儀が、2005年には政治家ロッド・ドナルドの葬儀が執り行われました。大聖堂は、市民にとって特別な場所であり続けています。

クライストチャーチ大聖堂は、単なる宗教施設ではなく、クライストチャーチの歴史と文化を象徴する存在です。再建に向けた取り組みは、市民の希望の光となっています。

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