クライミングチョック

クライミングチョックは、ロッククライミングにおける安全確保に不可欠な登山用具の一つです。特に、岩の割れ目に設置してクライマーの墜落を防ぐ役割を担います。この器具は、「カムディバイス」や「カミングデヴァイス」とも呼ばれ、その代表的な製品としては、宇宙航空学技術者でありクライマーでもあったL・ジャーダインが設計した「フレンド・カム・ロック」が挙げられます。

構造と機能

クライミングチョックのサイズは、指先ほどの小さなものから手のひらよりも大きなものまで、多岐にわたります。その中心的な構造は、4枚または3枚の可動式の扇形カムで構成されており、これらのカムはそれぞれ独立してスプリングによって可動します。使用時には、まずトリガーを引くことでカムの幅を狭め、この状態で岩の割れ目に挿入します。その後、トリガーを戻すと、各カムが岩の形状に合わせて広がり、しっかりと密着します。この機構により、凹凸の多い複雑な岩の割れ目にも対応でき、クライマーの安全を確保する支点として機能します。

クリーンクライミングとの関連

近年、環境保護の観点から、岩にハーケンなどの道具を打ち込まないクリーンクライミングが主流となっています。クライミングチョックは、岩に痕跡を残さずに設置できるため、リムーバブル・プロテクションとして非常に重要な役割を果たしています。これにより、自然の岩場を保護しながらクライミングを楽しむことが可能になりました。

ナチュラルプロテクションとの違い

日本では、クライミングチョックは長らくナチュラル・プロテクションとして認識されてきました。しかし、本来、欧米ではナチュラル・プロテクションとは、立木や岩などの自然物を支点として利用することを指します。この点において、クライミングチョックは人工的な器具であるため、厳密にはナチュラル・プロテクションとは異なります。

主なメーカーと製品名

クライミングチョックは、複数のメーカーから様々な製品が販売されています。主なメーカーとその製品名としては、ワイルドカントリー社の「フレンズ」、C.C.H.社の「エイリアン」、そしてブラックダイヤモンド社の「キャメロット（Camalot）」などが挙げられます。

参考文献

『IBS石井スポーツ2004-2005MOUNTAINEERING AND OUTDOOR EQUIPMENT』
『IBS石井スポーツ1998-1999MOUNTAINEERING AND OUTDOOR EQUIPMENT』
モンベルカタログ『モンベル2014クライミング』
堀田弘司『山への挑戦』岩波新書 ISBN 4-00-430126-2

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