クライム・ゲーム

クライム・ゲーム：1950年代デトロイトの陰謀と逃亡劇

1950年代のデトロイト。黒人ギャングのカート・ゴインズは、街を離れる資金を工面できずにいた。そんな彼のもとに、ダグ・ジョーンズと名乗る謎の人物から、会計事務所の金庫にある書類を盗む依頼が舞い込む。報酬の誘惑に駆られたカートは、依頼を引き受ける。

しかし、現場にはダグから雇われた別のギャング、ロナルドとチャーリーが待ち構えていた。3人は会計士マットの自宅に押し入り、家族を人質に金庫を開けさせる。だが、金庫の中は空っぽだった。

仕方なく、偽の文書を作成しダグに渡すことにした3人。マットとその家族を自宅に連れ戻す途中、チャーリーは突如銃を向け、一家を殺害しようとする。カートとロナルドはチャーリーを射殺し、事態を収拾する。

この事件を境に、カートとロナルドは事態の重大さを悟る。盗んだ文書には、デトロイトの根幹を揺るがす情報が記されていたのだ。彼らは、裏社会だけでなく、表社会をも巻き込む、危険な争奪戦に巻き込まれていく。

豪華キャストが織りなす人間ドラマ

本作は、ドン・チードル演じるカート・ゴインズを筆頭に、ベニチオ・デル・トロ、デヴィッド・ハーバー、ジョン・ハムなど、実力派俳優が多数出演している。それぞれのキャラクターが持つ複雑な思惑や、緊迫した状況下での葛藤がリアルに描かれ、物語に深みを与えている。特に、キーラン・カルキン演じるチャーリーの狂気的な行動は、物語全体に張り詰めた緊張感をもたらしている。

製作過程：コロナ禍による変更と豪華キャストの変遷

当初『Kill Switch』というタイトルで企画された本作は、当初はジョシュ・ブローリン、セバスチャン・スタン、ジョン・シナといった俳優が出演予定だったが、コロナ禍の影響により、撮影が延期され、キャストも大幅に変更された。最終的に、デヴィッド・ハーバー、キーラン・カルキン、ブレンダン・フレイザーなどが新たに加わり、タイトルも『No Sudden Move』に変更された。また、マット・デイモンのカメオ出演も話題を呼んだ。

スティーヴン・ソダーバーグ監督の匠の技

本作は、数々の名作を世に送り出してきたスティーヴン・ソダーバーグ監督がメガホンをとっている。ソダーバーグ監督は、テンポの良い演出と、緊迫感あふれるシーンの配置で、観客を物語に引き込んでいく。また、俳優たちの演技を引き出す手腕にも定評があり、本作でも、各俳優の個性を活かした演出が見られる。

高い評価と衝撃の結末

本作はRotten Tomatoesで88%の高支持率を獲得するなど、批評家から高い評価を得ている。ソダーバーグ監督のキャリアベストではないかもしれないものの、ケイパー映画のスペシャリストである監督の持ち味が存分に発揮されており、名優たちの演技も相まって、見応えのある作品に仕上がっている。

予測不能な展開と、衝撃的な結末が待ち受ける『クライム・ゲーム』。1950年代デトロイトの裏社会を舞台に繰り広げられる、緊迫感と重厚感溢れるサスペンスドラマをぜひ堪能してほしい。クレイグ・グラントの遺作でもある本作は、彼の最後の演技にも注目したい。

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