クランカーティ伯爵

クランカーティ伯爵：栄光と没落、そしてUFO研究

クランカーティ伯爵は、イギリス貴族の称号であり、アイルランド貴族爵位として2度創設されました。現在に至るまで続くこの歴史ある爵位は、マッカーシー家とトレンチ家の2家によって継承されてきました。それぞれの家の歴史を紐解きながら、クランカーティ伯爵家の興亡と、その独特の系譜をたどってみましょう。

マッカーティー家：反乱と没落

クランカーティ伯爵の歴史は、17世紀初頭、アイルランド貴族コーク県におけるマスケリー子爵、ブラーニー男爵に叙せられたチャールズ・マッカーシーから始まります。彼の息子ドノーは、アイルランド反乱に当初は加わったものの、後に王党派に転じ、その功績により1658年にクランカーティ伯爵に叙せられました。

しかし、4代伯爵ドノーはジャコバイトとしてウィリアマイト戦争に参加、捕らえられ、爵位を剥奪。フランスへ亡命するなど波乱の生涯を送りました。彼の息子ロバートは爵位を継承できませんでしたが、「クランカーティ伯爵」の称号を使用し、ニューファンドランド総督を務めました。

マッカーシー家のクランカーティ伯爵位は、その後の複雑な相続を経て断絶することとなりました。

トレンチ家：政治家と破産

18世紀後半、アイルランド庶民院議員として活躍したウィリアム・パワー・キーティング・トレンチが、クランカーティ伯爵の爵位を新たに授かりました。彼の息子リチャードは、小ピット派の政治家として輝かしいキャリアを歩み、アイルランド郵政長官やイギリス大使などを歴任。さらには、連合王国貴族であるトレンチ男爵、フースデン侯爵、クランカーティ子爵にも叙せられました。

しかし、5代伯爵ウィリアム・フレデリックは莫大な借金を抱え、破産を宣告されてしまいます。この出来事は、トレンチ家の栄華に終止符を打つ大きな転換点となりました。

8代伯爵とUFO研究

8代伯爵ウィリアム・フランシス・ブリンズリー・ル・プア・トレンチは、1979年に貴族院で政府によるUFO研究を提唱したことで知られています。この意外なエピソードは、クランカーティ伯爵家の歴史に、一風変わった彩りを添えています。

現在のクランカーティ伯爵

現在、クランカーティ伯爵家の当主は、8代伯爵の弟の息子であるニコラス・ル・プア・トレンチです。爵位の相続人は今のところ存在しません。

系譜と爵位

以下に、マッカーシー家とトレンチ家のクランカーティ伯爵の一覧を示します。


マッカーティー家

初代クランカーティ伯爵：ドノー・マッカーティー
2代クランカーティ伯爵：チャールズ・マッカーティー
3代クランカーティ伯爵：キャラハン・マッカーティー
4代クランカーティ伯爵：ドノー・マッカーティー (爵位剥奪)
ロバート・マッカーティー（爵位継承せず）


トレンチ家

初代クランカーティ伯爵：ウィリアム・パワー・キーティング・トレンチ
2代クランカーティ伯爵：リチャード・ル・プア・トレンチ
3代クランカーティ伯爵：ウィリアム・トマス・ル・プア・トレンチ
4代クランカーティ伯爵：リチャード・サマセット・ル・プア・トレンチ
5代クランカーティ伯爵：ウィリアム・フレデリック・ル・プア・トレンチ
6代クランカーティ伯爵：リチャード・フレデリック・ジョン・ドノー・ル・プア・トレンチ
7代クランカーティ伯爵：グレヴィル・シドニー・ロッチフォート・ル・プア・トレンチ
8代クランカーティ伯爵：ウィリアム・フランシス・ブリンズリー・ル・プア・トレンチ
9代クランカーティ伯爵：ニコラス・ル・プア・トレンチ

まとめ

クランカーティ伯爵の歴史は、アイルランドの歴史と複雑に絡み合い、政治的陰謀、反乱、そして栄光と没落を繰り返したドラマチックな物語です。 マッカーシー家とトレンチ家の両家が築き上げた歴史、そして現代に続く系譜は、イギリス貴族史において重要な一端を担っています。UFO研究の提唱という意外なエピソードも含め、クランカーティ伯爵の歴史は、今後も多くの人の関心を集め続けるでしょう。


参考文献

Cokayne, George Edward; Gibbs, Vicary; Doubleday, Herbert Arthur, eds. (1913). Complete peerage of England, Scotland, Ireland, Great Britain and the United Kingdom, extant, extinct or dormant (Canonteign to Cutts) (英語). Vol. 3 (2nd ed.). London: The St. Catherine Press, Ltd. pp. 214–221.
Cokayne, George Edward; Doubleday, Herbert Arthur; Howard de Walden, Thomas, eds. (1936). The Complete Peerage, or a history of the House of Lords and all its members from the earliest times (Moels to Nuneham) (英語). Vol. 9 (2nd ed.). London: The St. Catherine Press. pp. 440–441.
* Cokayne, George Edward; Hammond, Peter W., eds. (1998). The Complete Peerage, or a history of the House of Lords and all its members from the earliest times (Addenda & Corrigenda) (英語). Vol. 14 (2nd ed.). Stroud: Sutton Publishing. pp. 178–179. ISBN 978-0-7509-0154-3。

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