クリア (古代ローマ)

古代ローマにおけるクリア（curia）

クリア（ラテン語: curiae、英語: curia）は、古代ローマにおける市民団区分の一つであり、男子集会所（メンズハウス）に起源を持つ、非常に古い社会団体の遺制と考えられています。この制度は、ローマ社会の初期段階において、市民の組織化や社会秩序の維持に重要な役割を果たしました。

クリアの概説

王政ローマ建国時、初代の王ロムルスは、市民の最小単位として30のクリアを設置しました。そして、10のクリアをまとめたものをトリブスとしました。各クリアには、世話役としてのクリア長（curio）と祭司長（flamen curialis）が任命され、市民の遺言や養子縁組などの手続きを監督していました。これは、クリアが市民への加入を監督する役割も担っていたことを示唆しています。また、クリアは軍事単位としても機能し、ローマの初期の軍事力を支える基盤となりました。

クリアのような市民単位は、古代ギリシアにも見られ、フラトリア（兄弟団）と類似していると考えられています。しかし、クリアはフラトリアに比べて、より行政単位としての性格が強く、社会組織におけるより明確な役割を持っていました。クリアを単位とするクリア民会では、王の指揮権を追認するなどの重要な意思決定も行われました。

クリアの組織構造

古代の伝承によれば、都市ローマはティティエス、ラムネス、ルケレスという3つのトリブスで構成されていました。各トリブスは10のクリアに分割され、さらに各クリアは10のゲンス（氏族）に区分されていました。クリアは、元来、徴兵機関として機能し、防衛団体への加入と土地所有に対する監督役を担っていました。また、最高政務官（magistratus）への軍事職務の委託（インペリウム）を承認する権限も持っていました。クリアは、共通の公共祭祀を持つ国家的な制度であり、社会の結束を強化する役割も果たしていました。

対照的に、ゲンスはそれぞれ独自の祭儀や守護神を持つ、国家外的な組織でした。ゲンスは、血縁関係に基づいた集団であり、クリアとは異なる社会的な役割を担っていました。

クリアの変遷

クリアからなる初期のトリブスは、血縁的な性格が強いものでしたが、6代目の王セルウィウス・トゥッリウスによって、トリブスはより地縁的な4つの都市トリブスに再編されました。この再編によって、ケントゥリア（百人隊）が定められ、ローマは市民の拡大に対応できる体制を整えることができました。この改革により、クリアの軍事的な重要性は低下しましたが、市民社会における役割は、その後も続きました。

まとめ

クリアは、古代ローマの初期における重要な社会組織であり、市民の管理、軍事、祭祀など、多岐にわたる役割を果たしました。クリアの制度は、ローマ社会の発展とともに変遷を遂げましたが、古代ローマ社会を理解する上で欠かせない要素の一つです。

参考資料

的射場敬一「古代ローマにおける「市民」と「市民権」」『国士舘大学政治研究』第1巻、国士舘大学政経学部附属政治研究所、2010年、97-116頁。

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