クリスタ・ヴォルフ

クリスタ・ヴォルフ（1929年3月18日 - 2011年12月1日）は、ドイツの小説家であり、東西ドイツ分断時代を生きた作家として知られています。

生い立ちと時代背景

ヴォルフは1929年、プロイセン州ランツベルク・アン・デア・ヴァルテ（現在のポーランド領ゴジュフ・ヴィエルコポルスキ）に生まれました。第二次世界大戦後、ドイツの敗戦に伴い、故郷を追われ、家族と共にメクレンブルクへと移住することになります。この経験は、彼女の作品に大きな影響を与えました。

作家としてのデビューと成功

大学でドイツ文学を学んだ後、1961年に作家としてデビューしました。1963年には、ベルリンの壁建設によって引き裂かれた恋人たちを描いた『引き裂かれた空』を発表し、大きな反響を呼びました。この作品は、彼女を東ドイツを代表する作家としての地位を確立しました。ヴォルフは、ドイツ社会主義統一党に入党し、政治にも積極的に関わりましたが、次第に社会主義への失望を表明するようになり、反体制的な作家と見なされるようになります。

東西ドイツ統一とその後

ヴォルフの作品は、西ドイツでも高く評価されましたが、彼女自身は東西ドイツ統一には反対の立場を取りました。統一後、秘密警察の監視を受けていた体験を綴った『残るものは何か？』（1990年）を発表し、大きな議論を呼びました。この作品は、統一後のドイツ社会における過去の清算という問題を提起し、多くの人々に衝撃を与えました。

死去と遺産

2011年12月1日、ヴォルフは長期の闘病の末、ベルリンで亡くなりました。82歳でした。彼女の作品は、ドイツ文学だけでなく、世界文学においても重要な位置を占めています。ヴォルフの作品は、個人の内面と社会との関係、記憶と歴史、そして人間の存在の意味について、深く考えさせてくれるでしょう。

主な著作（日本語訳）

引き裂かれた空（集英社）
クリスタ・Tの追想（河出書房）
メディア-さまざまな声（同学社）
カッサンドラ
クリスタ・ヴォルフ選集 全7巻（恒文社）
チェルノブイリ原発事故
残るものは何か?
夏の日の出来事
どこにも居場所はない
作家の立場
ギリシアへの旅
幼年期の構図

もう一度検索