クリスチャン10世 (デンマーク王)

クリスチャン10世（1870年9月26日 - 1947年4月20日）は、デンマーク国王（在位：1912年 - 1947年）およびアイスランド国王（在位：1918年 - 1944年）を務めた人物です。

生涯

コペンハーゲン近郊のシャルロッテンボー城で生まれ、1912年にデンマーク国王に即位しました。1918年にはアイスランドが独立し、その初代国王も兼任しましたが、1944年にアイスランドは共和制に移行し、国王の座を退きました。

1920年のイースター危機

1920年、クリスチャン10世はイースター危機と呼ばれる政治的混乱を引き起こしました。第一次世界大戦後の領土再編において、かつてデンマーク領であったシュレースヴィヒの帰属問題が浮上。住民投票の結果、北シュレスヴィヒはデンマークに復帰しましたが、中シュレスヴィヒはドイツに残ることになりました。

クリスチャン10世は、中シュレスヴィヒもデンマークに併合することを主張し、当時のカール＝テオドール・ツァーレ首相と対立。国王は首相を罷免しようとしましたが、結果的に国民の強い反発を招き、社会民主主義者との交渉を余儀なくされました。この事件を機に、国王の権限は大幅に制限され、デンマークは立憲君主制としての道を歩むことになりました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦中、デンマークはナチス・ドイツに占領されました。アドルフ・ヒトラーは、デンマークを同胞であるゲルマン民族の国家と見なしていたため、クリスチャン10世はコペンハーゲンに留まることを許されました。

しかし、クリスチャン10世はナチスへの抵抗の象徴として国民の支持を集めました。毎日のように馬に乗って市内を巡回し、国民を鼓舞しました。公式な演説は占領軍によって制限されましたが、その抵抗の姿勢は国民の反独感情を刺激し続けました。1942年の落馬により体調を崩し、以後は病床に伏せることとなりました。

1944年にアイスランドが共和制に移行した際には、祝福のメッセージを送りましたが、自身は生涯にわたりアイスランド国王の称号を使い続けました。

1947年に死去し、ロスキレ大聖堂に埋葬されました。

人物

クリスチャン10世は、民主主義が発展する時代において、王家の権威を重視する傾向があり、必ずしも大衆に人気があったわけではありませんでした。しかし、二つの世界大戦を経験し、デンマークの民族主義とナチス・ドイツに対する抵抗運動の象徴として、国民から敬愛される存在となりました。また、身長199cmという長身でも知られています。

家族

1898年にメクレンブルク＝シュヴェリーン大公フリードリヒ・フランツ3世の娘であるアレクサンドリーネと結婚し、二人の息子をもうけました。

フレゼリク（後のフレゼリク9世）
クヌーズ

逸話

クリスチャン10世を語る上で、数々の逸話が存在します。

「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」に掲載された、ダビデの星を付けた服を着て馬に乗るクリスチャン10世の写真は、ユダヤ人との連帯の象徴として広く知られるようになりました。しかし、デンマークではユダヤ人にダビデの星の着用は強制されていなかったため、この話は創作であるという見方もあります。
占領下で王宮に掲げられたナチスの旗を撤去させたという逸話も有名です。国王はドイツの将軍に対し、旗の撤去を命じ、拒否されると「デンマーク兵が一人で撤去するだろう。それは私だ」と言い放ち、撤去させたと言われています。
アドルフ・ヒトラーがクリスチャン10世の誕生日を祝う電報を送った際、クリスチャン10世は「どうもありがとう。国王クリスチャン」とだけ返電し、ヒトラーを激怒させました。
ドイツ占領下で、デンマーク国民はクリスチャン10世のモノグラムのピンバッジを着用することで、愛国心と抵抗の意思を示しました。

系図

(系図については省略します。)

関連項目

ノルウェーの戦い
西部戦線
ヴェーザー演習作戦
アイスランド侵攻

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