クリステン・ケプケ

クリステン・ケプケ（Christen Schiellerup Købke, 1810年5月26日 - 1848年2月7日）は、19世紀のデンマーク美術、いわゆる「デンマーク黄金時代」を代表する画家の一人です。肖像画家、そして風景画家としてその才能を発揮しました。彼の名前は、デンマーク語の発音に忠実に「クレステン・クプゲ」と表記されることもあります。

生涯

コペンハーゲンで司祭の息子として生まれたケプケは、幼少期に病気を患い、それがきっかけで絵画の世界へと足を踏み入れました。11歳の時、長期の療養が必要となり、身体への負担が少ない絵画を学ぶことになったのです。1822年1月に美術学校の初等クラスに入学、翌年にはクリスチャン・ロレンツェン（Christian August Lorentzen）の教室で、肖像画の模写などを通して修行を積みました。

1827年には人物画の教室に進み、翌年にロレンツェンが亡くなった後は、クリストファー・エカスベア（Christoffer Wilhelm Eckersberg）の指導を受けることになります。同時期に弟が父親の仕事を継ぎ、ケプケは画家としての道を歩むことを決意しました。1831年にはsmall silver medallionを受賞、1832年にはlarge silver medallionを受賞するなど、才能を開花させていきます。また、王立美術コレクションに2つの絵画が買い上げられるなど、画家としての評価を高めました。この時期には、肖像画と風景画の両方を制作しており、その才能の幅広さを示しています。

1838年には奨学金を得て、1838年から1840年にかけてイタリアへ留学します。しかし、帰国後にイタリアを題材にした作品は、必ずしも高い評価を得るには至りませんでした。1843年には父親が亡くなり、経済的に苦しい生活を強いられます。画家としての成功を必ずしも収めることができなかったケプケは、装飾デザイナーとしての才能を発揮し、1844年から45年にはトーヴァルセン美術館の装飾を手がけました。しかし、美術アカデミーの会員になることは叶わず、1848年に肺炎のため、わずか38歳でその生涯を閉じました。

作品の特徴

ケプケの作品は、繊細な筆致と、光を捉える卓越した能力が特徴です。彼の風景画は、故郷であるデンマークの自然を、穏やかで親しみやすい視点から捉え、独特の色彩と光の表現で、見る人の心を捉えます。肖像画においては、対象人物の内面を深く掘り下げ、その人物の人となりを浮き彫りにしています。彼の作品は、デンマークの自然や人々の日常を、ありのままに、そして美しく描き出したものとして、現在も多くの人々を魅了し続けています。

主な作品

「カステレットの北門、コペンハーゲン」（1834年）
「アローセの庭の眺め」（1833年）
「コペンハーゲン近郊、湖の景色」(1836年)
「コペンハーゲンのフリードリクスベアの眺め」(1836年)
「コペンハーゲン、イースターブリッジの眺め」(1837年)
「コペンハーゲンの湖からの眺め」(1838年)
「ローマ、サン・ピエトロ大聖堂の眺め」(1839年)
「イタリアの風景」(1843年)

これらの作品は、彼の卓越した画力と、自然や人間に対する深い愛情を如実に表しています。

参考文献

Hans Edvard Nørregård Nielsen, Christen Købke, 3 bind, Gyldendal, 1996. ISBN 87-02-04937-6.
Monrad, Kasper: "Christen Købke", Dansk Guldalder (Hovedværker på Statens Museum for Kunst), København 1994, s. 138-139
Ph. Weilbach: "Købke, Christen Schiellerup" (i: Dansk Biografisk Lexikon*, 1. udgave, bind IX; København 1895; s. 618ff)

これらの文献は、ケプケの生涯と作品をより深く理解するための貴重な資料です。

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