クリスマス・キャロル (ドクター・フーのエピソード)

『ドクター・フー』「クリスマス・キャロル」：ディケンズと宇宙の奇跡の邂逅

2010年、クリスマスの日にBBCで放送された『ドクター・フー』のクリスマススペシャル「クリスマス・キャロル」は、シリーズの中でも特に高い評価を受けたエピソードとして知られています。1000人を超える乗客を乗せた宇宙船が、謎の雲の帯に遭遇し、墜落の危機に瀕します。そこに現れたのは、11代目ドクター（マット・スミス）。彼は、雲を操り、宇宙船の救助を拒否する惑星カズランの支配者、カズラン・サーディック（マイケル・ガンボン）と対峙することになります。

この物語は、チャールズ・ディケンズの不朽の名作『クリスマス・キャロル』から着想を得ています。ドクターは、タイムトラベルを用いてカズランの過去を改変し、彼を冷酷な支配者から優しく慈悲深い人物へと変え、宇宙船の危機を救おうと試みます。脚本は、シリーズを牽引するスティーブン・モファットが担当。モファット自身のディケンズへの愛情と、幼少期の恐怖体験から生まれた空飛ぶサメのアイデアなどが作品に息づいています。

物語の舞台と登場人物たち

物語は、独特の建築様式を持つ、まるで海底都市のような惑星を舞台に展開します。丸い窓が特徴的な建物や、金属製の構造物は、潜水艦を彷彿とさせる独特の雰囲気を作り出しています。カズランの書斎は、彼の孤独と圧倒的な権力を象徴する巨大な空間としてデザインされています。

カズラン役には、名優マイケル・ガンボンが抜擢。キャスティング担当者は当初、彼の出演を諦めていたため、彼の参加は大きな驚きでした。共演者であるマット・スミス、カレン・ギラン（エイミー・ポンド役）、アーサー・ダーヴィル（ローリー・ウィリアムズ役）は、ガンボンとの共演を大変名誉なことだと語っています。また、ウェールズの歌手、キャサリン・ジェンキンスが本作で女優デビューを果たし、劇中歌「Abigail's Song」を披露しています。

過去の要素とシリーズとの繋がり

本作では、過去のシリーズへのオマージュが散りばめられています。エイミーとローリーは、過去のエピソードで着用した衣装を身につけ、ドクターとカズランは、過去のドクターの象徴的なアイテムであるマフラーやトルコ帽を身につけるシーンもあります。こうした細やかな演出は、シリーズファンにとって大きな喜びとなるでしょう。

脚本と制作の舞台裏

モファットは、本作を「本当にクリスマスらしい」エピソードにしたいと考えていました。彼は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』にタイムトラベルと似た要素があることに着目し、それを『ドクター・フー』の世界観に取り入れました。カズランは、他の悪役とは異なり、傷つき、痛みを抱えたキャラクターとして描かれています。彼の過去を変えることで、ドクターはカズランの魂を救おうとするのです。

撮影はウェールズで行われ、新任のセットデザイナー、マイケル・ピックウォードが手がけたセットは、物語の世界観を完璧に表現しています。空飛ぶサメや魚などの特殊効果は、グリーンスクリーン技術などを駆使して制作されました。

放送と評価

「クリスマス・キャロル」は、イギリスでは1200万人を超える視聴者数を記録し、高い人気を博しました。アメリカでも高い視聴率を獲得し、米英同時放送という試みも成功を収めました。批評家からも高く評価され、「絢爛豪華な勝利」と評されるなど、多くの称賛を受けました。一方で、テンポの乱れや、一部キャラクターの扱い方に対する批判も存在します。

まとめ

「クリスマス・キャロル」は、ディケンズの古典的名作と『ドクター・フー』のSF要素が見事に融合した、心温まる感動的な物語です。豪華なキャスト、緻密なセットデザイン、そして独特の世界観は、多くの視聴者の心を掴みました。クリスマスの時期にふさわしい、忘れられないエピソードとして、多くのファンに愛されています。

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