クリーンパーク茂原火災

2022年（令和4年）2月1日未明から翌2月2日にかけて、栃木県宇都宮市にあるごみ焼却処理施設「クリーンパーク茂原」で発生した大規模な火災です。この火災は長時間にわたり燃え続け、施設に甚大な被害をもたらし、同市および周辺地域のごみ処理体制に深刻な影響を与えました。

火災の発生と推移

火災は2022年 2月1日の午前2時前、施設内の火災報知器が鳴動したことで覚知されました。宇都宮市から施設の管理を受託している業者が確認したところ、可燃ごみを一時的に貯めておく「ごみピット」から出火しているのを発見しました。初期消火として施設に備え付けられた放水銃2基を遠隔操作して消火活動を開始しましたが、炎の勢いは衰えませんでした。火災発生確認から約50分後、消防機関への通報が行われ、消防隊と消防団員約80名が出動して本格的な消火活動が始まりました。しかし、ごみピットに貯蔵されていた大量の可燃ごみに燃え広がった火勢はなかなか鎮まらず、最終的に鎮火したのは翌2月2日の午後4時頃でした。この火災は実に約38時間もの間、燃え続けたことになります。この火災により、ごみピット内の可燃ごみ約2000トンが焼失しました。

施設への被害と影響

長時間にわたる火災により、クリーンパーク茂原の主要設備は大きな損害を受けました。具体的には、ごみピット上部のクレーン2基、脱臭装置2台、そして初期消火に用いられた放水銃などが焼損し、施設全体としてごみの焼却処理が不可能となりました。

この機能停止は、宇都宮市が処理する可燃ごみの約7割、月に約9150トンを担っていたクリーンパーク茂原の焼却能力を喪失させることを意味しました。事故発生直後の調査では、原因の特定には至りませんでしたが、市はごみに混入していた可能性のあるスプレー缶、リチウム電池、ライターなどが発火源となった可能性を示唆しました。

施設の焼却機能の復旧には長期間を要することが見込まれ、市は当初、半年以上かかるとの見通しを示しました。その後、ごみピットのコンクリート壁の補強工事などが実施され、最終的にごみの受け入れが再開されたのは火災発生から約10ヶ月後の2022年12月24日でした。

事故調査と再発防止策

火災発生後、宇都宮市では事故対策委員会が設置され、原因究明と再発防止策の検討が進められました。2022年9月5日に佐藤栄一市長へ提出された報告書では、残念ながら出火原因の明確な特定には至りませんでした。しかし、将来的な火災発生リスクを低減するための提言がなされ、具体的には火災発生時の通報手順に関するマニュアルの見直しや、火災を早期に検知するためのシステム更新などが再発防止策として提示されました。

ごみ処理体制への影響

クリーンパーク茂原の機能停止は、宇都宮市だけでなく、同施設が処理を受け入れていた上三川町や下野市石橋地区のごみ処理にも大きな打撃を与えました。失われた焼却能力を補うため、市は様々な代替措置を講じました。まず、市内に保有するもう一つのごみ処理施設である「クリーンパーク下田原」での処理量を増やしましたが、これだけでは賄いきれませんでした。そのため、市内の民間施設に加え、鹿沼市や真岡市の公共施設、さらには埼玉県や千葉県の民間施設など、県内外の合計8ヶ所にもごみ処理を委託しました。しかし、それでも処理能力には限界があり、処理しきれない可燃ごみは、宇都宮市内の最終処分場「エコパーク下横倉」に一時的に保管（仮置き）せざるを得ない状況が生まれました。

市民生活への影響とごみ半減要請

処理能力の深刻な不足は、市民生活にも直接的な影響を及ぼしました。このまま通常通りにごみが排出され続ければ、仮置き場が満杯になり、ごみ収集自体に支障が出ることが懸念されたため、宇都宮市は市民および市内事業者に対し、ごみ排出量の削減を強く呼びかけました。市長名で出された要請では、ごみ焼却能力の約7割が失われた非常事態であることを強調し、衛生上問題のないごみはできる限り家庭や事業所で保管すること、生ごみの水切りを徹底すること、資源物の分別を推進すること、食品ロスを削減することなどを通じて、ごみ排出量を5割削減する目標が掲げられました。

市は生ごみ処理機の購入補助拡充などの支援策も打ち出しましたが、市民のごみ排出量は期待通りには減少しませんでした。処理困難な状況が続く中で、ごみ収集車が市外の遠隔地までごみを運搬する必要が生じたため、通常よりも収集時間がかかり、一部地域では収集の遅れが発生するなど、市民生活への影響は拡大しました。火災発生から数週間経過した時点でも、ごみ削減率は目標に遠く及ばず、仮置き場にごみが積み上げられる状況が続いていました。

電力供給への影響

クリーンパーク茂原では、ごみの焼却によって得られる熱を利用したバイオマス発電も行われていました。この発電した電力を主要な調達元としていた地元の小売電気事業者である宇都宮ライトパワーは、火災によりその供給源を突然失いました。同社は電力供給を開始してからわずか1ヶ月後の出来事であったため、事業運営の出だしを大きく躓かされる結果となりました。

このクリーンパーク茂原火災は、ごみ処理施設の重要性および、一度機能が停止した場合の地域社会への影響の大きさを改めて浮き彫りにした事例と言えます。

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