クルザード (ブラジルの通貨)

ブラジルで過去に使用されていた通貨の一つに、クルザード（Cruzado）があります。この通貨は、1986年2月28日から1989年1月15日までの約3年間、同国で流通しました。

クルザードは、当時の経済政策の一環として導入された通貨であり、それまでブラジルで使用されていたクルゼイロ（Cruzeiro）、特に「クルゼイロ・ノヴォ」と呼ばれた第二世代のクルゼイロに代わるものとして誕生しました。導入にあたっては、1000クルゼイロが1クルザードと等価になるという、大幅なデノミネーション（通貨単位の切り下げ）が行われました。しかし、クルザードの寿命は短く、1989年1月16日には新クルザード（Novo Cruzado）へと移行し、この際には1000クルザードが1新クルザードとして置き換えられました。

クルザードには、下位の補助単位としてセンターボ（Centavo）が存在し、1クルザードは100センターボに分割されました。通貨記号としてはCz$が使用され、国際標準化機構（ISO）が定める通貨コードはBRCでした。

クルザードの流通期間中には、様々な種類の硬貨と紙幣が発行されました。

硬貨については、導入年の1986年に1、5、10、20、50センターボ、そして1、5クルザードの合計7種類の硬貨が発行されました。これらの硬貨は主にステンレス鋼で製造されていました。翌1987年には、新たに10クルザード硬貨が加わりました。これらの通常硬貨の製造は1988年をもって終了しました。また、特筆すべきものとして、1988年には100クルザードの記念硬貨が製造されています。これはブラジルにおける奴隷制度廃止から100周年を記念したもので、「黄金律（Lei Áurea）」にちなむものです。この記念硬貨は、実際に市中に出回ることは比較的少なかったものの、そのデザインはクルザードの後継通貨である新クルザードなどの硬貨にも引き継がれました。

紙幣については、まず初期段階として、それまで使われていたクルゼイロ紙幣に新しい額面を重ねて印刷した暫定的な紙幣が発行されました。これらは10、50、100クルザードとして流通しました。その後、クルザード専用のデザインを持つ正式な紙幣が発行されます。当初は10、50、100、500クルザードの額面が登場しました。1987年にはさらに1,000クルザード紙幣が発行され、1988年には5,000クルザードおよび10,000クルザードといった、より高額な紙幣も導入されました。

このように、クルザードはブラジルの経済史において、短期間ながらも重要な役割を担った通貨であり、その短い命脈は当時のブラジルの経済状況を色濃く反映しています。

もう一度検索