クレマンティーヌ・ド・ベルジック

ベルギー王女クレマンティーヌ：波瀾万丈の生涯

1872年、ベルギー王レオポルド2世と王妃マリー・アンリエットの間に生まれたクレマンティーヌ王女は、両親にとって最愛の末娘でした。しかし、両親は一人息子を幼くして亡くしており、クレマンティーヌの誕生後も男子の世継ぎを望んでいました。そのため、クレマンティーヌは気難しい母のもとで孤独な幼少期を過ごします。姉であるステファニー王女と親しくしていたものの、ステファニーがオーストリア皇太子ルドルフと結婚すると、クレマンティーヌはさらに寂しい日々を送ることになります。

成長したクレマンティーヌは、父王から母の許可なしに自由に外出することを許されました。しかし、その自由は母后の死によって変化します。1902年、マリー・アンリエット王妃が亡くなると、クレマンティーヌはベルギー王室を支える重要な役割を担うことになります。

その後、クレマンティーヌはベルギー王位継承予定者であったボードゥアン王子と婚約関係にありましたが、ボードゥアン王子はクレマンティーヌの好意に答えることなく若くして亡くなりました。この喪失はクレマンティーヌに深い傷跡を残します。

その後、宮廷に仕えていたオーギュスト・ゴフィネ男爵との恋に落ちますが、王女と下級貴族の結婚は許されるはずもなく、この恋は実らなかった。しかし、1888年、運命の出会いがクレマンティーヌを待ち受けていました。それは、ナポレオン公ナポレオン・ヴィクトルとの出会いでした。クレマンティーヌはナポレオン公に心を奪われ、結婚を望みました。

しかし、父王レオポルド2世はボナパルト家当主との結婚を激しく反対します。父娘の間には激しい諍いが起こり、二人はほとんど言葉を交わさなくなりました。レオポルド2世は愛妾を宮廷に出入りさせていたため、クレマンティーヌとの関係はさらに悪化しました。クレマンティーヌは何度も父王に結婚の許しを求めましたが、レオポルド2世は頑として許さず、時には勘当をちらつかせました。クレマンティーヌとナポレオン公の結婚は、レオポルド2世の死まで待たなければなりませんでした。

1909年、レオポルド2世が崩御すると、クレマンティーヌは新国王アルベール1世から結婚の許しを得ます。そして、翌1910年、クレマンティーヌはナポレオン公とモンカリエーリで結婚式を挙げました。

結婚後、クレマンティーヌは二児をもうけます。マリー＝クロティルドはセルジュ・ド・ウィット伯爵と結婚し、ルイ・ナポレオンはナポレオン公として名を馳せました。

晩年をニースで過ごしたクレマンティーヌは、1955年にこの世を去りました。彼女の一生は、王室のしきたり、権力闘争、そしてロマンスが複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。クレマンティーヌ王女の生涯は、王室の華やかさと裏腹にある苦悩と葛藤、そして強い意志と愛情を私たちに示す、忘れがたい物語です。

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