クレメンス3世 (対立教皇)

クレメンス3世（？-1100年9月8日）は、11世紀後半の激動期に現れた、特筆すべき対立教皇です。グレゴリウス7世、ウィクトル3世、ウルバヌス2世、そしてパスカリス2世と、実に4代もの正統派ローマ教皇と対立し、ローマ教皇座の支配を巡って激しい争いを繰り広げました。

クレメンス3世はパルマ出身で、名門カノッサ伯の一族に属していました。当時、ヨーロッパは、教皇グレゴリウス7世と神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世による、権力闘争の真っ只中にありました。特に有名な「カノッサの屈辱」は、この対立の象徴的な出来事として知られています。

カノッサの屈辱から3年後、グレゴリウス7世はハインリヒ4世を再び破門し、皇帝位からの廃位をも宣言しました。しかし、ハインリヒ4世はドイツの司教たちの支持を得て、逆にグレゴリウス7世を廃位すると宣言。そして1080年6月25日、クレメンス3世を対立教皇として擁立しました。

ハインリヒ4世はクレメンス3世を支援し、ローマへ進軍。武力によってローマを制圧しました。グレゴリウス7世はノルマン人のロベルト・イル・グイスカルドに救出されましたが、ノルマン軍はローマ市民から評判が悪く、結局グレゴリウス7世はローマを逃れることになります。

1084年3月24日、クレメンス3世はハインリヒ4世によって聖別され、正式に教皇として即位しました。同時に、ハインリヒ4世はクレメンス3世によって神聖ローマ皇帝として戴冠されました。この出来事は、教皇と皇帝の権力関係を象徴的に示すものでした。

グレゴリウス7世の死後、後継者であるウィクトル3世は、クレメンス3世に対抗するだけの力を持たず、一時的にクレメンス3世にローマを追われました。しかし、クレメンス3世はすぐにローマへ復帰しました。ウィクトル3世の死後、ウルバヌス2世もまたクレメンス3世を追い落とすことができませんでした。

ウルバヌス2世の死後、パスカリス2世が教皇に即位した1099年8月、クレメンス3世はピエルレオーネ家によってローマから追放されました。しかし、クレメンス3世はハインリヒ4世と協力し、ローマ奪還を目指して活動を続けました。

クレメンス3世は、対立教皇でありながら、4代もの正統派教皇と対抗し、ローマで長きに渡り影響力を保持し続けました。その実力は、正統派教皇をも凌駕するほどでした。そのため、一部では正式な教皇として認識されることもあります。しかし、1100年9月8日、チヴィタ・カステラーナで死去しました。クレメンス3世の死は、中世ヨーロッパにおける教皇と皇帝の権力闘争の激しさ、そしてその複雑さを物語る出来事でした。

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