クロエ (ブランド)

クロエ (Chloé)

クロエは、1952年にエジプト系パリジェンヌであるギャビー・アギョンがパリで立ち上げた、フランスを代表するラグジュアリーファッションブランドです。創業者の名前ではなく、親しい友人の名前を冠したのは、自身の名前が占い師を連想させると考えたためとされています。現在はスイスのコングロマリット、リシュモングループの一員となっています。

高級既製服のパイオニア

クロエの最大の功績の一つは、「プレタポルテ」（Ready-to-Wear、既製服）という概念を高級ファッションの世界に持ち込み、その市場を切り拓いたことにあります。クロエが登場する以前、高級メゾンは富裕層向けのオートクチュール（注文服）が中心であり、一般の人々は質の低い既製服しか手に入れることができませんでした。ギャビー・アギョンは、当時の堅苦しいファッションに飽き足らず、また市場の需要を感じ取り、高級素材を用いながらも、柔らかく体の線に沿うような高品質な既製服、「ラグジュアリー・プレタポルテ」を生み出すことを決意しました。この画期的な試みはすぐに他のクチュリエたち（例えばジバンシィ）にも影響を与え、現在ではデザイナーズブランドの主流はプレタポルテへと完全に移行しています。

歴史とデザイナーの変遷

クロエの歴史は、革新的なデザインと才能あるデザイナーたちによって彩られています。1956年にはカフェ・ド・フロールで初のコレクションを発表。その後、カール・ラガーフェルドが主任デザイナーに就任した1966年には、ブランドは1970年代を象徴する存在となり、ジャクリーン・ケネディやグレース・ケリーといった時代のアイコンたちに愛用されました。1985年にリシュモングループ傘下に入った後も、ブランドは進化を続けます。1990年代には再びカール・ラガーフェルドがクリエイティブを牽引し、1997年にはステラ・マッカートニーがロマンティックでありながらも遊び心のある新たなクロエ像を提示。2001年にはフィービー・フィロがよりパーソナルでセンシュアルなタッチを加え、姉妹ライン「シーバイクロエ」もスタートさせました。以降もパウロ・メリム・アンダーソンやハンナ・マクギボン、クレア・ワイト・ケラーといったデザイナーたちが、それぞれのエッセンスをブランドにもたらしています。

主な製品ライン

クロエは、ウェアを中心に、バッグ、シューズ、小物類といった幅広いアイテムを展開しており、そのほとんどが女性向け商品です。2002年にはバッグのラインを発表し、「パディントン」バッグが爆発的な人気を博すなど、アクセサリー分野でも大きな成功を収めています。

特に人気が高いのが2008年にスタートしたフレグランスラインです。インターパルファム社製造の香水は、毎年新作が加わり、特に20代の女性を中心に日本でも広く支持されています。2013年には「シーバイクロエ」からもフレグランスが登場しました。過去には日本限定で男性向けのバレンタインコレクションや、ライセンス製造によるランジェリーラインも展開されていました（ランジェリーは2010年まで）。

販売網とグローバル展開

クロエは、パリやロンドン、東京、ニューヨークといった世界主要都市に加え、マルベラやモナコのようなリゾート地にも直営店や主要店舗を構えています。また、セレクトショップや空港の免税店でも商品が取り扱われています。本社はパリにありますが、ニューヨークや東京（麹町）、香港、ドバイなど、海外にも事務所を置いてグローバルに事業を展開しています。

日本市場においては、リシュモングループの日本法人であるリシュモンジャパンがウェアやバッグなどの主要商品の多くを取り扱っています。サングラスについては、ライセンス契約に基づきマーショングループが製造・販売を行っています。

近年はデジタル戦略にも力を入れており、iPhone専用ウェブサイトをラグジュアリーブランドとしていち早く開設したり、ファッションショーの同時中継を行ったりしています。また、模倣品の問題に対しては、公式サイトで正規オンライン小売業者リストを公開するなど対策を講じています。

クロエは、その創業時から一貫して、ラグジュアリーと着やすさを両立させた現代的な女性らしさを追求し、ファッション界に多大な影響を与え続けているブランドです。

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