クロスベンチャー

クロスベンチャーとは

クロスベンチャー（英語: crossbencher）は、イギリス貴族院やオーストラリア連邦議会など、一部の立法機関において、特定の政党に属さず中立的な立場を持つ議員たちを指す用語です。彼らは「クロスベンチ」と呼ばれる与党席と野党席の間の座席に着席することからその名称が生まれました。日本語では、これを中立議員などと説明されることがあります。

イギリスにおけるクロスベンチャー

イギリス貴族院では、クロスベンチャーは主に無所属議員で構成されています。2009年以前には法服貴族の一部もこのカテゴリに含まれていましたが、現在は庶民院議長や貴族院議長を務めた者が慣習的にクロスベンチャーとなることが多いです。しかし一部の無所属貴族院議員は実際にはクロスベンチャーに分類されません。

近年、クロスベンチャーの数は増加していますが、それは政治的な理由に基づくものではなく、主に貴族への授爵の変化によるものです。貴族院任命委員会が設立された2000年以降、67名の無所属の一代貴族が議員に指名されました。2018年5月時点で、181名のクロスベンチャーが存在し、これは貴族院全体の23％に達しています。クロスベンチャーは、保守党や労働党に次ぐ第三の会派と見なされています。また、イングランド国教会の高位聖職者も無所属ですが、彼らはクロスベンチャーには含まれません。

コンベナー制

クロスベンチャーは特定の問題に対して統一見解を持たないため、党派の主張をまとめる幹事は設けられませんが、運営上の都合から「コンベナー」と呼ばれる代表者が選出されています。現在のコンベナーは2023年に就任したキノール伯爵で、議院の運営に関与していますが、与野党間の通常の協議には直接的には参加しません。

オーストラリアにおけるクロスベンチャー

オーストラリアでは、クロスベンチャーという表現は無所属議員と少数政党の議員の両方を指し、元老院と下院の両方で用いられます。この国では、最近の連邦選挙を経てもクロスベンチャーの人数が増加し、影響力が強まっています。特に、2010年の総選挙では、いずれの主要政党も過半数を獲得できず、6名のクロスベンチャーが勢力の均衡を握ることとなりました。

元老院では単記移譲式による比例代表制が採用されており、与党はクロスベンチャーとの交渉なしには法案通過が困難になることもあります。2016年の選挙後、クロスベンチャーの議席が大幅に増え、その中の多くは与党の支持を表明し、全体の議席数を決定する上で重要な役割を果た教しています。

ニュージーランドにおけるクロスベンチャー

ニュージーランドの下院でも、例えばファースト党のように、与党・野党に対して中立的な立場をとる少数政党の議員がクロスベンチャーと称されることがあります。

このように、クロスベンチャーは英国、オーストラリア、ニュージーランドの議会において重要な役割を果たしており、政治における多元的な声を反映する存在として注目されています。

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