クロボシ

クロボシ

『クロボシ』は、日本の漫画家、山田也によって描かれた作品です。かつて少女漫画家として活動していた作者にとって、本作は男性向け漫画雑誌で初めて連載された記念碑的な作品となりました。集英社の『ビジネスジャンプ増刊BJ魂』にて2008年12月1日号から連載が始まり、その後は同誌および『ビジネスジャンプ』本誌でも不定期に掲載されました。単行本は、集英社のヤングジャンプ・コミックスレーベルより1巻が刊行されています（2009年9月時点）。

あらすじ

物語の主人公は、白石最（しらいし さい）、25歳。彼は幼い頃から、めまいや悪寒といった原因不明の体調不良に悩まされてきました。これらは作中で「黒いモノ」と称されており、大学受験や就職面接といった人生の重要な局面でも度々現れ、その度に最は失敗を繰り返してきました。自身の身に起こる奇妙な現象の原因を探求する中で、最は右手の手のひらにあるホクロに、人々の心に宿る邪気を吸収し浄化する特別な力があることを発見します。この力を「光明ボクロ」と呼び、ルビでは「星」と記されています。このホクロの能力によって、最は邪気を浄化する力を得ますが、その代償として著しい体力の消耗を伴い、多くの場合、意識を失ってしまいます。邪気は決してなくならない人間の悪意から生まれるため、最の、悪意と向き合い戦う孤独な日々が始まるのでした。ホクロの能力が原因で安定した職に就けず、最はアルバイトで生計を立てています。

主な登場人物

白石 最（しらいし さい）
本作の主人公。25歳。右手の手のひらには、白石家の男子に代々受け継がれるとされる「光明ボクロ」（“星”）を持ち、邪気を吸収・浄化する力を持つ。しかし、この能力を使うと極度に疲弊し、失神してしまう。ホクロのせいで就職に苦労し、アルバイトで生活している。両親を事故で亡くしており、現在は古い一軒家で下宿している。

道江（みちえ）
最が下宿している家のおばあさん。最の右手に“星”があることを、幸運を掴んで生まれた証だと信じて温かく見守っている。

由美（ゆみ）
最の小学校時代からの友人。現在は小学校の教員として働いている。

戸川 隆道（とがわ たかみち）
最の高校時代からの親友。高校時代は不良だったが、その当時、まだ原因が分からなかった最のホクロの力によって一度浄化されたことがある。現在の彼は、見た目は少し太っているが、人の良さそうな会社員。物語の途中で殺人鬼の犠牲となる。

佐伯 笑里（さえき えみり）
最と同じ家に下宿することになった女子高校生。同性からも揶揄されるほどの豊かな胸を気にしており、また義父からの視線に悩んでいたため、普段は猫背になり長い髪で体を隠すように陰気に振る舞っていた。しかし、最の力によって邪気が浄化されたことで、内面も明るくなり、コンプレックスだった胸のことも気にしなくなる。

書誌情報

山田也『クロボシ』集英社〈ヤングジャンプ・コミックス〉、既刊1巻（2009年9月現在）
* 2009年9月18日発売、ISBN 978-4-08-877729-0

本作は、人間の内面に潜む悪意という普遍的なテーマを、超常的な能力と日常的な生活描写を交えながら描いた作品です。主人公・白石最が、自身の持つ特別な力を通じて様々な人々と出会い、彼らの抱える「黒いモノ」と向き合い、そして抗えない悪意の存在に直面していく様子が描かれています。作者の新たな挑戦として、男性誌で描かれたダークファンタジーの世界観が展開されています。

もう一度検索