クロム酸カリウム

クロム酸カリウム：性質、用途、安全性

クロム酸カリウム (Potassium chromate) は、化学式 K₂CrO₄ で表される無機化合物です。鮮やかな黄色の結晶性固体で、水に容易に溶解します。比重は 2.732、融点は 957 ℃と報告されています。

物理的性質と化学的性質

クロム酸カリウムは、硫酸カリウムと類似した結晶構造を有し、四面体型のクロム酸イオン (CrO₄²⁻) を含む斜方晶系に属します。その格子定数は、a = 5.92 Å、b = 10.39 Å、c = 7.68 Å と測定されています。

水溶液中では、クロム酸イオンは加水分解を受け、弱塩基性を示します。この水溶液に酸を加えると、二クロム酸イオン (Cr₂O₇²⁻) が生成され、溶液の色は黄色からオレンジ色へと変化します。この変化は、以下の平衡反応で表すことができます。

CrO₄²⁻ + H₂O ⇌ HCrO₄⁻ + OH⁻

2CrO₄²⁻ + 2H⁺ ⇌ Cr₂O₇²⁻ + H₂O

製造方法

工業的には、二クロム酸カリウム (K₂Cr₂O₇) を炭酸カリウム (K₂CO₃) と反応させることで合成されます。この反応は、以下の化学式で表されます。

K₂Cr₂O₇ + K₂CO₃ → 2K₂CrO₄ + CO₂

用途

クロム酸カリウムは、その酸化作用を利用して、様々な用途に使用されています。主な用途としては、酸化剤、媒染剤、分析用試薬などが挙げられます。分析化学においては、沈殿試薬として重要な役割を果たし、銀イオン (Ag⁺) と反応して赤褐色のクロム酸銀 (Ag₂CrO₄)、バリウムイオン (Ba²⁺) と反応して黄色のクロム酸バリウム (BaCrO₄) の沈殿を生成します。これらの反応は、定性分析や定量分析に利用されています。

Ag⁺ + CrO₄²⁻ → Ag₂CrO₄

Ba²⁺ + CrO₄²⁻ → BaCrO₄

安全性

クロム酸カリウムは、六価クロム化合物であり、強い毒性を持ちます。日本の毒物及び劇物取締法では劇物に指定されており、取り扱いには細心の注意が必要です。また、労働安全衛生法では「クロム酸およびその塩」として、第2類特定化学物質に指定されています。人体への影響としては、皮膚への接触による炎症、呼吸器への刺激、発がん性などが懸念されます。そのため、取り扱いには適切な保護具を着用し、換気の良い場所で作業を行う必要があります。廃棄物についても、適切な処理方法に従う必要があります。

まとめ

クロム酸カリウムは、その特徴的な性質と用途から、工業的に重要な化合物です。しかし、強い毒性を有するため、取り扱いには十分な注意が必要です。安全データシート (SDS) を参照し、適切な安全対策を講じた上で使用することが重要です。

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