クワイヤ

クワイヤ：大聖堂における聖なる空間

クワイヤとは、主に西方教会の大聖堂や教会堂において、祭壇のある聖堂（サンクチュアリ）と身廊の間に位置する特別な区域を指します。通常は内陣の西側を占めますが、身廊の東端に位置する場合や、修道院では身廊の西端に配置され、サンクチュアリとのバランスをとることもあります。

歴史的変遷

初期キリスト教では、サンクチュアリは身廊に直接接続しており、クワイヤは身廊の東端の一部に過ぎず、低い手すりで仕切られていたに過ぎませんでした。コンスタンティヌス大帝によるキリスト教の公認と修道院制度の発展、典礼の充実化によって、クワイヤは次第に独立した建築空間として発展していきました。

「クワイヤ」という語源は、祭壇を囲む聖歌隊や聖職者の輪を意味する「corona」に由来するとされています。初期のクワイヤはベーマ（演壇）と接続しており、ベーマには高位聖職者の座席や聖書朗読台が置かれていました。現在でも、ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂では、この配置を見ることができます。その後、ベーマ、内陣、クワイヤは東へ移動し、現在の位置関係が確立されました。また、祭壇の後方、アプスに配置されることもあります。

ヨーロッパの大聖堂では、東端の礼拝堂に通じる主祭壇の後方に祭壇背後部（Retro-Choir）が設けられるのが一般的です。クワイヤの建築構造は、修道院の僧侶や司教座聖堂の聖職者たちが聖務日課を行う場所としての機能に基づいて発展しました。講壇と聖書朗読台は必ずクワイヤに配置され、サンクチュアリに面した側廊の中央に独立した聖書朗読台が置かれることもあります。オルガンはクワイヤまたは教会の上階ギャラリーに設置されます。

座席：聖歌隊席とベンチ

クワイヤの座席は、精巧な彫刻が施された木製聖歌隊席（choir stalls）が用いられることが多いです。聖歌隊員は礼拝中にここで着席、起立、跪拝を行います。長椅子（pews）や個別の聖歌隊席が備えられている場合もあります。教会の壁面に沿って数列に並んだ座席も一般的です。

聖歌隊席は、ベンチと比べて、修道院や共同教会で伝統的な形式をとることが多いです。修道院の聖歌隊席は、修道士が立つ際に折りたため、座る際に下ろせるようになっています。座席の下部にはしばしばミゼルコルディア（小さな木の席）が取り付けられており、長時間の礼拝で疲れた際に寄りかかることができます。修道士席の上部は、座っている際の頭部と、起立時の腕を支えるようにデザインされています。修道院では、礼拝中の修道士の起立・着席には厳しい規律が存在します。

一方、小教区教会ではベンチが一般的です。ベンチには背もたれにクッション付きの膝置きが設けられ、後ろの人が跪くことができるようになっています。また、前の列には祈祷台が取り付けられており、聖歌隊員が聖書などを置くことができます。

大聖堂では、司教の座席（司教座）は通常クワイヤに設置されます。

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