グエムル-漢江の怪物-

『グエムル - 漢江の怪物 - 』

『グエムル - 漢江の怪物 - 』（英語タイトル: The Host）は、2006年に公開された韓国の映画で、ポン・ジュノが監督を務めています。この作品は、主に社会問題の風刺を含みながらも、心に残る怪物映画として広く知られています。韓国では7月に公開され、翌月には日本で上映され、大ヒットを記録しました。2019年時点で、韓国国内での観客動員数は1,300万人を超え、歴代観客動員数第6位の記録を保持しています。グエムルというタイトルは、原題のハングル表記「괴물」をカタカナ表示したものです。

ストーリー

物語は、漢江から突然登場した謎の怪物グエムルによって始まります。この黒い両生類のような生物は、河原の人々を捕食し、その混乱の中で、露店を営む男カンドゥの娘、ヒョンソを捕らえ、水中に消えてしまいます。ヒョンソは怪物の巣が存在する下水道から携帯電話で救助を求め、家族のカンドゥは彼女を助けるため、怪物を追いかけながらも在韓米軍から逃げる羽目になります。在韓米軍は、怪物が未知の病原菌を保有していると見なし、カンドゥを捕えようとします。

風刺的要素

この作品は、怪物の出現が2000年に起きた在韓米軍によるホルムアルデヒドの無断流出事件をきっかけにしている点で、反米的な風刺を含んでいます。映画の中で登場する「エージェント・イエロー」という化学兵器は、アメリカ軍がベトナム戦争で使用した「エージェント・オレンジ」を暗示しており、監督自身もこの反米性を認めています。この映画が公開された時期は、韓国政府が米軍から韓国軍への戦時作戦統制権の移譲を進めていたため、特に注目を浴びました。

ロボトミーとその象徴

カンドゥは未知のウイルスに感染したとして病院に隔離されますが、ヒョンソを救った後、再び米軍に拘束され、ロボトミー手術という衝撃的な選択を受けます。これは、在韓米軍による韓国市民に対する選択の象徴であり、またこの手術はアメリカでは1960年代から行われていないため、倫理的な問題を提起しています。

怪物のデザイン

怪物のデザインは、チャン・ヒチョルが担当し、製作には約50億ウォンの費用がかかりました。キャラクターのコンセプトは「憎めない悪役」として、竹中直人やジャック・ブラックを想起させるように設計されています。デザインにあたっては時間をかけ、特に日本のアニメーション映画との類似性について議論を呼びましたが、両国の配給関係者はその否定をしています。

受賞歴

『グエムル』は、多くの映画賞を受賞し、青龍賞、アジア・フィルム・アワード、大鐘賞などで最優秀作品賞や最優秀監督賞を獲得するなど、評価が高い作品となっています。その隠されたメッセージや、刺激的な描写が観客に深い印象を与えた結果であり、社会問題を扱ったフィクション作品として今なお多くの注目を集めています。

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