グスタフ・ラッデ

グスタフ・フェルディナント・リヒャルト・ラッデ（1831年11月27日 - 1903年3月3日）は、ドイツの博物学者であり、探検家として名を馳せました。彼の業績は、特にロシア、コーカサス地方の自然誌研究において顕著です。

生涯と探検

ラッデは、現在のポーランド領であるダンツィヒ（グダニスク）で、教師の息子として生まれました。正規の教育は限られていましたが、薬剤師として働き始め、その過程で博物学への関心を深めていきました。1852年、薬剤師を辞め、植物学者クリスチアン・フォン・ステフェンと共にクリミア地方で2年間、動植物の採集に没頭します。その後、ヨハン・フリードリヒ・フォン・ブラント、カール・エルンスト・フォン・ベーアらと共に南ロシアを探検しました。1855年には、天文学者ルートヴィッヒ・シュヴァルツが率いる東シベリア探検隊に、植物学者兼動物学者として参加しました。

1864年、ラッデはトビリシに移住し、コーカサス山脈とその最高峰エルブルス山周辺地域を探検。植物採集に加えて、現地の言語、民謡、習慣を記録しました。トビリシには博物館（コーカサス博物館）と収蔵庫を設立し、収集物を展示しました。さらに、黒海沿岸、カスピ海、現在のトルクメニスタンであるアシガバートまで探検範囲を広げました。1890年代には、ロシア大公アレクサンドル・ミハイロヴィチに従い、地中海、インド、日本などアジア各地を航海し、北アフリカにもロシア皇室と共に訪問しました。その後、トビリシ市議会のメンバーにも選出されています。

学会活動と献名

ラッデは、1884年にウィーンで開催された国際鳥類学会で議長を務めました。また、イギリス鳥学会やロンドン動物学会の名誉会員にも選ばれています。彼の名にちなんで献名された動物には、カラフトムジセッカ、コーカサスイワヒバリ、アルメニアクサリヘビ、モンゴルヒキガエルなどが存在します。ラッデが採集したザバイカルおよびアムール産の標本は、ロシア科学アカデミー動物学研究所動物学博物館に、コーカサスとザカスピ産の標本は、トビリシのグルジア国立博物館に保存されています。

1889年、ラッデは長年の科学的地理学への貢献が認められ、王立地理学会から金メダルを授与されました。

著書

ラッデは、探検や研究の成果を多数の著書として発表しました。主な著書には以下のようなものがあります。

Reisen im Süden von Ost-Sibirien in den Jahren 1855-59 (“1855-59年の東シベリア南部の旅行”, 1862–1863)
Vier Vorträge über den Kaukasus (“コーカサスに関する4つのエッセイ”, 1874)
Die Chews'uren und ihr Land (“Chews'urenと彼らの土地”, 1878)
Ornis Caucasica. Die Vogelwelt des Kaukasus (“コーカサスの鳥類相”, 1884)
Das Ostufer des Pontus (“ポントスの東岸”, 1894)
Die Sammlungen des kaukasischen Museums (“コーカサス博物館のコレクション”, 1900以降)
* 1892年には、アレクサンドル大公の航海に関する記録をロシア語で執筆しています。

ラッデの探検と研究は、地理学、生物学、民族学など、多岐にわたる分野に貢献しました。彼の収集品と記録は、現在も博物館で大切に保管され、研究に活用されています。

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