グラニー・ナニー

グラニー・ナニー：ジャマイカの英雄

グラニー・ナニー（1686年 - 1733年）は、ジャマイカにおけるマルーン（逃亡奴隷）の著名な指導者であり、同国では英雄として広く尊敬されています。彼女は反乱を率い、複数の戦いでイギリス軍を打ち破ることに貢献しました。その功績を称え、500ジャマイカドル紙幣には彼女の肖像が描かれています。

生い立ちとマルーンへの参加

グラニー・ナニーは、西アフリカのガーナでアシャンティ族の一員として生まれました。奴隷としてジャマイカに連れてこられたとされていますが、奴隷反乱を支援するために意図的に派遣されたという説も存在します。当時ジャマイカは奴隷反乱が頻発しており、特にマルーンは組織化され、強固な防御体制を築いていました。

マルーンは、元々スペインが16世紀に導入した奴隷たちが、17世紀のイギリス侵攻に対抗するために解放されたことに端を発します。初期のマルーンは自由なアフリカ人も含まれていましたが、イギリス支配下では、組織的なマルーンに多くの奴隷が逃亡し合流しました。マルーンには、古くからの解放奴隷によるスパニッシュ・マルーンと、イギリス統治時代に新たに加わったブリティッシュ・マルーンの二つの派閥が存在しました。

カリスマ性を持つナニーは、ウィンドワード・マルーンを率いて、これらの派閥をまとめ上げました。一方、クジョーはリーワード・マルーンを率い、彼もまた英雄として称えられています。プランテーション所有者による奴隷への残酷な扱いから、ナニーは5人の兄弟とともに逃亡を決意しました。兄弟たちは、組織を効率化するために別々の場所でマルーンを組織することにしました。クジョーはセントジェームズ、アコンポンはセントエリザベス、ナニーとクァオはポートランドでそれぞれ活動を始めました。

ナニータウンの設立と防衛

1720年までに、ナニーとクァオはブルーマウンテン山脈北東部に位置する町を組織化し、支配を強化しました。この町は後にナニータウンとして知られるようになります。ナニータウンは600エーカーの広さを持ち、逃亡奴隷たちが生活するのに適した環境でした。町はアシャンティ族の社会組織を模倣して組織されました。

マルーンは、交易商人との取引や、プランテーション襲撃によって物資を確保し、山中で生き抜きました。ナニータウンは、ストーニー川を見下ろせる尾根に位置しており、イギリス軍の攻撃に対する自然の要塞でした。マルーンは、アベンと呼ばれる角笛を使って見張りを立て、戦闘時には指定された戦士を動員しました。

奴隷解放とイギリス軍との戦い

グラニー・ナニーは、奴隷解放のための戦略に長けており、50年間で800人以上の奴隷を解放したとされています。彼女はハーブの知識やリーダーシップで、奴隷たちの自由と健康を支えました。しかし、その活動はイギリス政府を動揺させました。1728年から1734年の間、ナニータウンはイギリス軍による度重なる攻撃を受けましたが、マルーンはゲリラ戦術と地形を活かした戦いにより、イギリス軍を退け続けました。

呪術と文化

檀原照和の研究によれば、グラニー・ナニーはオービアと呼ばれる呪術も用いていたとされています。彼女は、その知識と能力でマルーンの士気を高め、戦いを有利に進めたと考えられています。また、マルーンはアベンと呼ばれる角笛を使って通信を行っており、この角笛はアフリカ起源であると示唆されています。

その後のマルーンとナニーの遺産

1739年、マルーンは自治権を獲得しましたが、その協定には逃亡奴隷の引き渡しが含まれていたため、後に奴隷反乱の鎮圧に駆り出されることもありました。しかし、グラニー・ナニーの英雄的な行動はジャマイカの歴史に深く刻まれ、1975年には国民的英雄として宣言されました。彼女の肖像は現在も500ジャマイカドル紙幣に描かれています。

参考資料

檀原照和『ヴードゥー大全』夏目書房、2006年

外部リンク

Queen Nanny profile(英語版)

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