グラミン・ファミリー

グラミン・ファミリーとは

グラミン・ファミリーは、ムハマド・ユヌスが設立したグラミン銀行から発展した、多様な（非営利を含む）ベンチャー企業の集団です。その多くは、グラミン銀行の本拠地であるバングラデシュのダッカに拠点を置いています。グラミン銀行が事業を多角化したきっかけは、1980年代後半に養魚場や深井戸灌漑施設が十分に活用されていなかったことでした。1989年、漁業プロジェクトがグラミン漁業財団に、灌漑プロジェクトがグラミン・クリシ（農業）財団へとそれぞれ独立したことで、多様な事業が別々の組織として活動するようになりました。

グラミン・ファミリーには多くの企業が含まれており、ここではユヌス氏の著書で紹介されている主な企業について解説します。

主要なグラミン・ファミリー企業

グラミン銀行：
マイクロファイナンス機関として、貧困層への小額融資（マイクロクレジット）を無担保・低金利で提供しています。農村部を中心に展開しており、その活動はインフラ、通信、エネルギーなど多岐にわたります。2006年には、ユヌス氏とともにノーベル平和賞を受賞しました。

グラミン・トラスト：
1989年設立の非営利NGO。マイクロクレジットを貧困撲滅の手段として活用し、グラミン銀行のアプローチを広めることを目的としています。世界中のマイクロクレジット機関（MFI）に対し、トレーニング、技術支援、資金提供、コンサルティングなどの活動を行っています。「立ち上げ・運営・引き渡し（BOT）」プログラムでは、マイクロファイナンスを迅速に実施したい機関を支援し、運営が軌道に乗るまでトレーニングを実施します。また、グラミン・グローバル・ネットワーク（GGN）を主催し、マイクロクレジットに関する情報発信も行っています。

グラミン・クリシ（農業）財団：
1991年設立。農業技術の向上と生産量の増加を目指し、実験や研修を行っています。

グラミン・ウドーグ（企業）：
1994年設立。バングラデシュの伝統産業である手織り布を「グラミンチェック」ブランドとして振興しています。

グラミン・ファンド：
マイクロクレジット以外のベンチャーや実験への投資を行う非営利組織です。1980年代後半のグラミン銀行のベンチャーキャピタル事業を継承し、零細企業を支援しています。株式投資も行い、グラミン・ファミリー外の企業にも出資しています。

グラミン・モーショー・オー・バシューサムパッド（漁業と畜産）財団：
1994年設立。魚の養殖による貧困削減を目指しています。漁業、穀物、畜産を統合した営農組織の開発を進めています。特に、土地を持たない貧困層、特に女性が共有資産にアクセスできるようにすることに重点を置いています。初期のグラミン銀行のプロジェクトであった養魚場管理事業も行っています。

グラミン・テレコム：
1995年設立。貧困層に通信サービスを提供しています。初期は農村に携帯電話を普及させる「ヴィレッジフォンプログラム」として活動していましたが、現在は独立しています。グラミン・フォンが構築した回線を活用し、電話を貸し出す事業を行っていました。

グラミン・シャモグリー（製品）：
1996年設立。「グラミンチェック」の手織り布や手工芸品などを国内で販売しています。当初は輸出を目的としていましたが、国内販売に注力するようになりました。

グラミン・サイバーネット：
1996年設立。グラミン・フォンの携帯電話ネットワークを利用したインターネット・プロバイダ事業を展開しています。

グラミン・シャクティ（エネルギー）：
1996年設立。バングラデシュ農村部での再生可能エネルギー技術の普及を推進しています。太陽光発電や風力発電などの開発、提供を行い、技術トレーニングも実施しています。

グラミン・フォン：
1997年設立。バングラデシュで最大の携帯電話会社の一つであり、GSM携帯電話の市場シェアの過半数を占めています。低コストで高品質な携帯電話サービスを提供することを目標としています。

グラミン・カルヤン（福祉）：
1996年設立。グラミン銀行のメンバーや村人に医療サービスを提供しています。メンバーは低価格で診療を受けることができます。

グラミン・シッカ（教育）：
1997年設立。農村部での教育推進を目指し、ローンや奨学金を提供しています。ITを活用した識字率向上や、教育プログラムの提供も行っています。奨学金制度では、定期預金による利子を奨学金に充当しています。

グラミン・コミュニケーションズ：
1997年設立。ソフトウェア、ハードウェア、インターネットサービス、IT教育などを行う非営利のIT企業です。農村部に情報アクセスを提供するVCIP（Village Computer and Internet Program）を開発しました。

グラミン・ソリューションズ・リミテッド：
急成長中のソフトウェア開発会社で、携帯電話による送金や取引などの金融サービスを提供しています。

グラミンITパーク：
2001年設立。ダッカでハイテクオフィスビルの開発や、ISP、データ転送などの事業を行っています。

グラミン・バイボサ・ビカーシュ：
1994年設立。農村部の起業家に対し、マイクロクレジットに加え、知識や技術を提供しています。大規模ビジネスへの融資保証も行っています。

グラミン情報ハイウェイ会社：
2001年設立。データ相互通信とインターネットプロバイダ業務を行っていましたが、現在は活動をほぼ休止しています。

グラミン・スター・エデュケーション：
2002年設立。情報テクノロジーのトレーニングを提供していましたが、現在は活動をほぼ休止しています。

グラミン・ビテック：
2002年設立。電気製品や電力設備を提供しています。

グラミン・ヘルスケア・トラスト：
2006年設立。医療関係の基金を募り、投資する非営利企業です。

グラミン・ヘルスケア・サービス：
2006年設立。貧困層にヘルスケアを提供することを目的とした営利ソーシャルビジネスです。病院の設立などを行っています。

グラミン・ダノン・フーズ：
2006年設立。グラミン銀行とダノングループの合弁事業で、栄養強化ヨーグルト「ショクティ・ドイ」を子供たちに提供しています。営利企業でありながら、社会貢献を最優先としています。

グラミン・ユニクロ：
2010年設立。グラミンとファーストリテイリングの合弁企業で、バングラデシュ国内で衣料品の企画、生産、販売を行っています。ソーシャルビジネスとして、グラミン銀行のネットワークを通じて販売されています。

まとめ

グラミン・ファミリーは、マイクロファイナンスを基盤としながら、様々な分野で革新的な事業を展開しています。これらの企業は、貧困削減と社会的な課題解決に取り組んでおり、その活動は世界中で注目されています。

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