グラモフォン (雑誌)

『グラモフォン』（Gramophone）は、1923年にイギリスのロンドンで誕生した、クラシック音楽専門の月刊誌です。その創刊は作家であるコンプトン・マッケンジーによって行われました。この雑誌は特に、市販されている商業録音に関する評論や情報提供に力を入れています。

創刊以来、様々な変化を経ており、1999年からはヘイマーケット・メディア・グループの傘下に入りましたが、2013年からはマーク・アレン・グループへと所有が移り、現在に至っています。

長年にわたり、クラシック音楽評論の世界において重要な位置を占めてきました。公式サイトや過去の誌面では、かつて「1923年以降のクラシック音楽に関する世界的権威（The world's authority on classical music since 1923）」という標語を掲げていました。しかし近年では、「世界最高のクラシック音楽評論（The world's best classical music reviews）」という表現に改めており、その時々の重点を示す変化とも言えます。

『グラモフォン』誌の活動の中で最も広く知られているのが、毎年秋に開催される「グラモフォン・アワード」です。これはクラシック音楽の録音に対して贈られる権威ある賞で、その年に発表された数多くの新譜の中から、各分野（交響曲、協奏曲、室内楽、オペラなど）で最も優れた録音が選出され、表彰されます。このアワードは、クラシック音楽の録音市場において非常に大きな影響力を持っています。

年間のアワードに加え、誌面では継続的に優れた録音を紹介しています。毎月、編集部が注目する12の録音を「グラモフォン・チョイス」（以前は「グラモフォン・エディターズ・チョイス」と呼ばれていました）として発表します。また、年末のクリスマス特別号では、寄稿する評論家たちがそれぞれ、その年に特に印象に残った4〜5枚の録音を個人的に選出し、「グラモフォン・クリティクス・チョイス」としてまとめて紹介する企画も行われています。

2012年からは、クラシック音楽の録音文化に顕著な功績を残した人々を称えるための「グラモフォン・ホール・オブ・フェイム」という殿堂を設けています。ここには、演奏家だけでなく、プロデューサー、録音エンジニア、A&Rディレクター、レーベル創設者など、録音制作に関わる多岐にわたる人物が選ばれ、その貢献が称えられます。初回は2012年5月号で最初の50名が発表され、以降毎年新たな人物が殿堂入りしています。

『グラモフォン』誌の大きな価値の一つに、その膨大なバックナンバーがあります。2012年後半にデジタルアーカイヴサービスが刷新され、デジタル購読者であれば、1923年の創刊号から最新号まで、すべての号をオリジナルに近いPDF形式で閲覧できるようになりました。これは、クラシック音楽の録音史や評論の変遷を研究する上で非常に貴重な資料となっています。

『グラモフォン』は、創刊から一世紀近い歴史を持つ、クラシック音楽の録音・評論における世界有数の媒体です。その評論記事、主催するアワード、そして充実したアーカイヴは、クラシック音楽ファンや研究者にとって欠かせない情報源であり続けています。

もう一度検索