グランヒストリア 〜幻史世界記〜

グランヒストリア 〜幻史世界記〜

『グランヒストリア 〜幻史世界記〜』は、1995年6月30日にバンプレストからスーパーファミコン用として発売されたロールプレイングゲームです。既存のキャラクター版権を用いた作品を多く手掛けていた同社にとって、世界観からシステムまで全てがオリジナルの意欲作として位置づけられます。

運命を書き換える歴史改変システム

物語の根幹を成すのは、20年後に訪れる世界の破滅という未来を変えることです。プレイヤーは未来の歴史が記された「世界記」の力を持つ主人公となり、予言者として人々の信頼を得ながら、運命を変えるために行動します。このゲームの最大の特徴は、プレイヤーが行う様々な「選択」が、シナリオの進行だけでなく、多くの登場人物たちの生死やその後の人生を大きく左右する点にあります。

特徴的な戦闘と魔法

戦闘システムは、敵味方が平面上に配置されるのではなく、プレイヤーキャラクターの前後左右に加え、上空にも敵が出現する「ドームバトルシステム」を採用しています。この立体的な配置により、戦略性が生まれています。また、戦闘からの逃走には敵のいない方向を向く必要があるため、四方を囲まれた場合は容易に逃げられません。

魔法は「ザ神」と「ゲ神」の2系統に分かれています。それぞれの系統を習得できるキャラクターは限られていますが、主人公は両方の系統の魔法を使うことができます。ザ神の魔法は「召霊石」を消耗して発動し、ゲ神の魔法はキャラクターの精神力である「スピリット」を消費します。

独特の世界観と二柱の神

ゲームの舞台となるグラン大陸は、一般的な西洋ファンタジーとは異なり、アジアや中東を思わせる独特の文化や雰囲気を持ちます。この世界では、古来より「ザの神」と「ゲの神」という二柱の神が信仰されており、それぞれの信奉者たちは対立しつつも辛うじて均衡を保っていました。しかし、その力の天秤が崩れたことが、未来の破滅を招いた原因とされています。

「ザの神」は、太古に造られた機械システムであり、その自動戦闘機械は人々に「天使」として崇拝されています。グラン大陸中央に位置するアサシナ王国がこの信仰の中心地です。一方、「ゲの神」は精霊や妖怪のような自然に根ざした存在として認識されており、大陸北方の軍事大国ガラマニアが主に信仰しています。

主人公と彼/彼女を取り巻く人々

主人公は、肉体を持たず人間の体に宿って活動する、未来から来た存在です。その出自は劇中では詳しく語られず、プレイヤー自身がゲームの世界に介入する存在であることが示唆されています。最初に主人公が宿る体は、結婚式を目前に殺害された村人トールのものです。プレイヤーはトールの体で新たな名前を名乗り、村人から騎士、ついには国王へと上り詰めますが、後に宿敵ケインに肉体を奪われてしまいます。肉体を失った主人公は、素性不明の「第2の男」に宿り、暴君と化したかつての自分（ケインが成り代わった姿）に対抗するレジスタンスとして活動することになります。

主人公の運命に関わる人物として、ケインは「黒衣の予言者」として現れ、歴史改変を妨げようとします。彼は物語の鍵となる「世界記」を奪い、トールの肉体を乗っ取ってアサシナ国王に成り代わり、帝国を築いて周辺国を侵略していきます。

主人公と共に戦う仲間たちも多様です。ゲ神を信奉する盗賊団の頭領からガラマニア国王となるガイナスター、アサシナ騎士団長ミケーネ、ドルーク神殿の神官リザーラとその妹サマン、追放されたアサシナ王子クノン、ガイナスターの妹ドネア姫など、多くの人物が登場し、プレイヤーの選択によって彼らの人生は大きく変化します。実直な騎士が敵となり、スリの少女がレジスタンスのリーダーになるなど、予想もつかない展開が待ち受けます。

開発と反響

開発はJフォースが手掛け、シナリオは脚本家の會川昇と南原順、音楽は竹内基朗、ビジュアル・ディレクターはメカニックデザイナーの福地仁が担当しています。音楽は舞台に合わせて東南アジア風のテイストが取り入れられ、グラフィックも油絵調の背景や大きめのキャラクターで力が入っていましたが、スーパーファミコンの容量制限から、構想を完全に活かしきれなかったとスタッフは後に語っています。もし、あと一年待ってPlayStationで発売できていれば、より複雑な年表表現なども可能だっただろうと振り返っています。

本作は速水奨のナレーションによるテレビCMで一定の知名度を得ましたが、作品自体は広く知られることなく埋もれてしまったという見方もあります。特に、歴史を書き換えるという斬新なシステムは、低年齢層のプレイヤーには受け入れられにくい側面があった可能性が指摘されています。一方で、ゲーム発売時のアンケートでは、繰り返し発生する戦闘への評価は分かれたものの、ストーリーの評価は非常に高かったことがうかがえます。

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