グランマ・モーゼス

アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス、通称グランマ・モーゼスは、1860年9月7日にニューヨーク州で生まれました。彼女は10人兄弟の3番目として、農家の家庭で育ちました。幼い頃から近所の家庭で奉公に出て働き、その後、27歳で同じく奉公に出ていたトーマス・サーモン・モーゼスと結婚しました。

結婚後、夫婦でバージニア州に小さな農場を経営しましたが、10人の子供を授かったものの、そのうち5人は幼くして亡くなりました。その後、夫の希望で故郷のイーグル・ブリッジに戻り、農場を経営する傍ら、子供たちが独立し、両親も亡くなったことで、時間的な余裕ができたため、絵を描き始めました。モーゼスは当初、刺繍絵画を制作していましたが、リューマチを患ったため、リハビリを兼ねて油絵に転向しました。

78歳の時、彼女の作品が地元で展示された際、アマチュアコレクターの目に留まり、その作品はニューヨーク近代美術館で展示されることになりました。さらに1940年、80歳で初めての個展「一農婦の描いたもの」が開催され、彼女の名は一躍有名になりました。

その後も彼女の創作意欲は衰えることなく、89歳で当時の大統領ハリー・S・トルーマンにホワイトハウスに招待されるなど、国民的な画家として広く知られるようになりました。100歳を迎えた際には、ニューヨーク州知事によって「グランマ・モーゼスの日」が制定され、1961年に101歳で亡くなるまで、絵を描き続け、約1600点の作品を遺しました。

グランマ・モーゼスの作品は、素朴で温かみのある作風が特徴で、彼女の描く風景や日常の生活は多くの人々に愛されています。高齢になってから本格的に絵画を始めたという彼女の人生は、年齢に関わらず新しいことに挑戦する勇気を与えてくれます。彼女の作品と人生は、多くの人々を魅了し、その影響は今日でも色褪せることはありません。

著書
『モーゼスおばあさんの絵の世界 田園生活100年の自伝』 未来社 1991年 翻訳:加藤恭子
『モーゼスおばあさんの四季 絵と自伝でたどるモーゼスおばあさんの世界』 BL出版 2003年 編集:W.ニコラ・リサ 翻訳:加藤恭子、和田敦子

参考文献
* 『老人の心理がわかる本』 下仲順子 2000年 河出書房新社

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