グラン＝プレ

グラン＝プレは、カナダのノバスコシア州キングス郡に位置する農村地域です。フランス語で「大牧草地」を意味し、その名の通り、肥沃な土地と豊かな自然に恵まれています。アナポリス渓谷の東端、ガスパロー川とコーンウォリス川に囲まれた半島に位置し、ミナス湾に面しています。ミナス湾はファンディ湾の支湾であり、世界でも有数の潮の満ち引きの差を誇ります。

歴史

グラン＝プレの歴史は、17世紀後半に遡ります。1680年頃、アカディア人の入植者であるピエール・メランゾンによって開拓されました。彼はポール・ロワイヤルから東へ移動し、この地に定住しました。当時、アカディアはイギリスの支配下にありましたが、この地の肥沃な土壌と豊富な資源は、以前からフランス人に知られていました。入植者たちは、塩沼を干拓し、広大な農地を開発しました。その結果、グラン＝プレはアカディアの主要な集落へと発展しました。1680年代中頃には、教会が設立され、サン＝シャルル・ド・ミヌ教区が誕生しました。

18世紀初頭には、アン女王戦争やジョージ王戦争などの戦乱がこの地を襲いました。1704年には、ニューイングランド人の遊撃兵ベンジャミン・チャーチによって村が襲撃され、焼き払われました。また、1747年には、フランス軍とイギリス軍の間でグラン＝プレの戦いが行われました。この戦いでは、フランス軍が勝利を収めましたが、村はイギリスの支配下に留まりました。

1749年から1755年にかけては、ル・ルートル神父戦争が起こり、グラン＝プレのアカディア人たちは、ノヴァスコシア本土からの脱出を支援する重要な役割を担いました。彼らは、食料の提供や、労働力の供給を通じて、アカディア人の抵抗を支えました。

アカディア人の追放

1755年、フレンチ・インディアン戦争中、グラン＝プレのアカディア人たちは、イギリス軍によって追放されました。この追放は、アメリカの詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの詩『エヴァンジェリン』によって後世に語り継がれることになりました。アカディア人たちは各地に分散し、一部はカナダ沿岸部の他地域に戻りましたが、多くがアメリカ合衆国に渡り、特にルイジアナでは「ケイジャン」と呼ばれる文化を形成しました。

ニューイングランド入植者の再入植

アカディア人追放後、グラン＝プレにはニューイングランドからの入植者たちが再入植し、この地は「ホートン」と改名されました。しかし、グラン＝プレは、農村としての役割を担い続け、大きな町場はウルフヴィル付近に形成されました。1920年代になると、ドミニオン・アトランティック鉄道によってグランプレ記念公園が開発され、観光地としての役割も持つようになりました。1957年には、この公園は国定史跡となり、現在ではパークス・カナダによって管理されています。

現在

現在、グラン＝プレは、アカディア人の歴史と文化を伝える重要な場所として、多くの観光客が訪れます。グラン＝プレ国定史跡は、アカディア人の追放を記念する場所として、また、この地の歴史と文化を学ぶことができる場所として、多くの人々に親しまれています。また、この地域には、ノヴァ・スコシアで有名なワイナリー「Domaine de Grand Pré」や、コーヒー商社「Just Us!」の本社などもあり、観光の拠点としても機能しています。エヴァンジェリン海岸は、渡り鳥の立ち寄り場所としても知られ、ファンディ湾の潮の干満を観察できる絶好のポイントでもあります。

世界遺産

グラン＝プレの景観は、2012年にユネスコの世界遺産に登録されました。この世界遺産は、以下の基準を満たしていると評価されました。

(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

グラン＝プレは、歴史的建造物や美しい自然が残るだけでなく、アカディア人の歴史や文化を深く感じることができる場所です。この地を訪れることで、過去の出来事を知り、未来への教訓とすることができます。

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