グリーゼ710

グリーゼ710は、へび座の尾部に位置する10等級のK型主系列星で、太陽の約0.6倍の質量を持ちます。この星は肉眼での観測は困難ですが、将来的に太陽系に接近することが予測されており、天文学的な関心を集めています。

太陽系への接近

現在、グリーゼ710は地球から約62光年の距離にありますが、過去の観測データに基づく計算から、約135万年後に太陽系に1.1光年まで接近すると推定されています。この接近は、太陽系に大きな影響を与える可能性があり、特にオールトの雲やエッジワース・カイパーベルトといった太陽系の外縁領域に影響が及ぶと考えられています。グリーゼ710が太陽から1,000 au（約1496億キロメートル）以内を通過する確率は低いものの、仮にこの距離まで接近した場合、太陽系の内側に彗星が多数流入する可能性が指摘されています。

グリーゼ710は、その質量と接近距離から、今後1000万年の間に太陽系へ最も大きな重力的な影響を及ぼす恒星になると考えられています。特に、オールトの雲を大きく乱し、太陽系内への彗星の流入を増加させることで、地球への小天体衝突確率の上昇が懸念されています。ただし、具体的な衝突確率の増加は、試算によると約5%程度とされています。2016年に公開されたガイア計画のデータにより、グリーゼ710の運動に関する推定精度が向上しました。その結果、太陽系への最接近は現在から約135万年後で、太陽から約0.211光年の距離を通過すると予測されています。この距離まで接近した場合、オールトの雲への重力的な影響は、従来の予測よりも20倍に達するとされています。最接近時の視等級は-2.7と、全天で最も明るい恒星になるでしょう。グリーゼ710の固有運動が小さいのは、この星が太陽系に対してほぼ直線的に移動しているためです。

2018年に公開されたガイア計画の第二回公開データを用いた計算では、グリーゼ710は128.1万年後に太陽から約0.222光年を通過するとされました。これは、以前の推定よりも接近時期が少し早まり、通過距離もわずかに遠くなったことを示しています。

太陽系に過去1000万年で最も大きな重力的な影響を与えたのは、約7万年前に0.82光年まで接近したショルツ星です。グリーゼ710の接近は、ショルツ星の接近よりもさらに大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の研究と観測が待たれるところです。グリーゼ710の接近は、太陽系の未来に大きな影響を与える可能性を秘めた天体現象であり、科学的な興味を引く対象となっています。

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