グリーンライン (ダラス高速運輸公社)

DARTライトレール グリーンライン

テキサス州ダラスおよびその周辺地域において公共交通サービスを提供するダラス高速運輸公社（Dallas Area Rapid Transit、略称DART）は、広範なライトレール路線網を運営しています。グリーンライン（Green Line）は、このDARTライトレールを構成する主要な系統の一つとして、地域の重要な移動手段となっています。

グリーンラインは、ダラス市の北東部に位置するバックナー駅を起点とし、市の中心部を縦断した後、北西方向に進路を取り、キャロルトン市にあるノースキャロルトン/フランクフォード駅を終点とする路線です。特にダラス中心部では、他のDARTライトレール系統と線路を共用しており、主要駅であるパール/アーツ・ディストリクト駅などを経由します。この路線は、ダラスの北東部、中心部、そして南部・北西部を結ぶ、地域間の重要なアクセス手段としての役割を担っています。

グリーンラインの開業は、一度に全線が開通したのではなく、段階的に進められました。最初に旅客営業が開始されたのは2004年11月で、ダラスの主要なイベント施設であるアメリカン・エアラインズ・センターへのアクセス向上を目指し、中心部のビクトリー駅までの区間が先行開業しました。その後、テキサス州最大規模の祭典であるステート・フェア・フォア・テキサスの開催に合わせる形で、2009年9月14日にはフェアパーク駅までの区間が延伸されました。そして、残りの区間の建設が進められ、終点であるノースキャロルトン/フランクフォード駅まで含めた全線が開通し、現在の路線網が完成したのは2010年12月6日のことでした。

運行形態としては、原則としてバックナー駅からノースキャロルトン/フランクフォード駅までの全区間を走行する列車が主体となっています。全線走破した場合の所要時間は約75分です。ただし、利用者の少ない早朝や深夜の時間帯を中心に、全区間を走行しない区間運転の列車も一部設定されています。また、ユニークな運行形態として、平日早朝にはバックナー駅を出発し、中心部を経由してオレンジラインへと直通し、ダラス・フォートワース国際空港（DFW空港）駅まで向かう列車が1便のみ設定されています。一方で、グリーンラインのルートの一部であるフェアパーク駅とパール/アーツ・ディストリクト駅間の区間は、オレンジラインを含む他のDARTライトレール系統の列車も乗り入れる、路線網の中核をなす共通区間となっています。

グリーンラインの沿線には、様々なデザインの駅が見られます。特に2009年以降に開業した区間の駅については、DARTが推進する「Your guide to the art along the Green Line」というプロジェクトに基づき、複数の芸術家がデザインを手掛けています。これにより、それぞれの駅が個性的な景観を持ち、利用者に視覚的な楽しみを提供するとともに、公共空間におけるアートの役割を果たす試みがなされています。

路線の建設期間中には、安全に関わる重大な事故も発生しました。2007年2月9日、グリーンラインの建設現場において、掘削されたトレンチが崩壊する事故が発生しました。この事故により、建設作業に従事していた作業員のうち1名が死亡し、もう1名が負傷するという痛ましい結果となりました。この事故は、1992年以降にDARTが関与する事業において、初めての死亡者を出した事故として記録されています。

グリーンラインは、段階的な延伸と多様な運行形態により、ダラス都市圏の東部、中心部、北西部を結ぶ重要な鉄道ネットワークとして機能しており、地域の発展と住民の生活を支えています。

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