グレアム・プリースト

グレアム・プリースト - 論理学者と哲学者

グレアム・プリースト（Graham Priest）は、イギリスおよびオーストラリア出身の著名な論理学者であり哲学者です。現在、メルボルン大学のBoyce Gibson教授、ニューヨーク市立大学の特別教授、さらにはセント・アンドリュース大学のArcheプロフェッショナルフェローとして活躍しています。彼はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで哲学博士（PhD）を取得し、メルボルン大学から名誉文学博士（D. Litt）を授与されています。これまでの研究は、論理学、形而上学、西洋哲学史、東洋哲学史にわたる多岐にわたっています。

さらに、プリーストは空手道にも情熱を持ち、糸東流の四段を取得している他、オーストラリアのNational Refereeの資格も持っています。

研究内容

プリーストの研究分野は、非古典論理に特化しており、特に「矛盾許容論理（paraconsistent logic）」や、「真でありかつ偽である文を認める真矛盾主義（dialetheism）」などが中心です。彼のアプローチは、非存在対象を真正な対象として扱う「マイノング主義」と、それに基づく志向性の意味論にも及びます。彼は論理パラドクスの分析を通じて、矛盾が現実世界に存在する可能性について探求しています。

矛盾許容論理と真矛盾主義

従来の古典論理や直観主義論理では、矛盾を伴う前提から任意の命題を導くことができるという「爆発原理」が存在します。このため、矛盾を含む理論は、全ての命題が定理になるという問題を引き起こします。しかし、プリーストはこの爆発原理を妥当ではないとし、矛盾を含む理論でも整合性を保てる論理体系を提唱しました。たとえば、フィクションや法律における矛盾は、我々がその世界中心の論理に従わないことを示しています。

プリーストは、現実世界も矛盾を含む可能性があると主張し、これを基に真矛盾主義を構築しました。これにより、理論の非古典的な側面が強調され、矛盾を許容する重要性が理解されます。

マイノング主義と志向性の意味論

彼は、リチャード・シルヴァンやテレンス・パーソンズとともに、マイノング主義者の一人として知られています。この立場では、存在しない対象に関しても真なる主張ができると考えます。マイノング主義は、ラッセルやクワインの批判を受けた歴史を持ちますが、近年、再評価されています。プリーストは、非存在対象を扱うために可能世界意味論を拡張し、志向性動詞を含む言語に対する新しい意味論を展開しました。

主な業績と貢献

プリーストは多くの著作や論文を発表しており、それらは論理学と哲学の接点を探る上で重要な役割を果たしています。彼の著書の一部には、次のようなものがあります：

• - 「In Contradiction」（1987年）
• - 「Beyond the Limits of Thought」（1995年）
• - 「Logic: a Very Short Introduction」（2000年）
• - 「Doubt Truth to be a Liar」（2006年）

そのほかにも多くの論文で研究成果を発表しており、彼の洞察は論理学の伝統に挑戦し、新しい視点を提供しています。プリーストは、矛盾や非古典論理の重要性を理解する上で不可欠な人物です。

結論

グレアム・プリーストは、現代哲学や論理学に多大な影響を与えた学者です。彼の研究の中での矛盾への取り組みや、存在しないものに対する真なる主張は、哲学的な探求に新たな視点を提供し続けています。彼の業績は、今後の研究にも大きな影響を与えることでしょう。

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